JR東のSuicaデータ「販売検討」に不安の声も 利用者が知っておくべき「功罪」両面とは

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8000万枚超の発行数を誇るJR東日本のICカード乗車券「Suica(スイカ)」。同社は2022年1月、このSuicaの利用データの販売を検討すると発表した。同社は2013年、利用者の情報を他社に提供したことで批判を受け、中止に至った経緯がある。今回の発表にも、インターネット上では個人情報流出などを懸念する書き込みが散見された。Suicaデータ利活用の是非をあらためて考える。

「プライバシー配慮を徹底」、その功と罪

 JR東日本は今回、有識者会議の提言を踏まえてデータ提供方法の改善を図り、先述した「駅カルテ」を作成した。この「駅カルテ」は、首都圏約600駅の各駅の利用状況を示す定型レポートであり、1時間単位、年齢は10歳単位で集計したデータを、1か月の平均値(平日・休日別)を表示している。プレスリリースには、50人単位で集計(30人未満は非表示)するなどして「プライバシーへの配慮を徹底」(同社)したと記してある。

 たしかに、これだけ時間や年齢、人数に幅を持たせ、集計データの細部を取り去れば、個人を識別することはかなり難しくなるので、2013年のように批判が多く寄せられることもないだろう。

 ただし、ビッグデータの提供方法としては約9年前よりも後退したことになる。データの精度が下がり、得られる情報が少なくなるからだ。たとえば同じ10代でも、前半と後半では行動範囲が異なる。10歳単位でおおまかに区切られては、有益な情報が得られないと感じる人もいるだろう。

 Suicaデータの社外提供に関しては2013年当時、複数のマスメディアがJR東日本のやり方を疑問視する記事を載せている。たしかに、同社の利用者に対する説明が日立製作所よりも遅れた点は不可解だし、対応が不十分だった点も否めない。しかし、併せて冷静に考えるべきことがあるのも事実だ。

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