JR東のSuicaデータ「販売検討」に不安の声も 利用者が知っておくべき「功罪」両面とは
8000万枚超の発行数を誇るJR東日本のICカード乗車券「Suica(スイカ)」。同社は2022年1月、このSuicaの利用データの販売を検討すると発表した。同社は2013年、利用者の情報を他社に提供したことで批判を受け、中止に至った経緯がある。今回の発表にも、インターネット上では個人情報流出などを懸念する書き込みが散見された。Suicaデータ利活用の是非をあらためて考える。
2013年、社外提供が中止に至った理由
Suicaデータを社外に提供することを最初に発表したのは、JR東日本ではなく、日立製作所だった。2013年6月27日、日立製作所がJR東日本から個人情報を含まないSuicaデータの提供を受け、ビッグデータ解析技術で分析し、首都圏における駅エリアの利用目的や利用者構成などをレポートとして提供すると発表した。
しかしこの発表は、大きな反発を招いた。利用者からは「日立製作所へのデータ提供は許されるのか」「本当に個人が特定できないのか」「周知不足ではないか」などの指摘が相次ぎ、インターネットにおける批判の声も大きくなった。
このためJR東日本は、同年7月25日のプレスリリースで、利用者に不安を与えたことに対して謝罪し、翌7月26日から希望するSuica利用者が社外へのデータ提供を拒否できる「オプトアウト」の受付を開始した。また同年9月6日には、社外の専門家による有識者会議を設置し、外部へのSuicaデータ提供方法について検討を始めた。最終的に、日立製作所へのSuicaデータの提供は同年に中止となった。
この有識者会議が2014年2月に作成した「中間とりまとめ」には、Suicaデータから個人を識別する氏名、電話番号、物販情報を削除するなどの情報処理をしたため、「JR東日本では、個人情報保護法の『個人情報』に当たらないと解した」と記されている。
一方、「一部の専門家からSuicaデータを継続して提供すると個人が識別でき、他の情報との照合によって個人の特定につながるのではないか等との指摘がなされた」とも記されている。
こうした一連の流れから約9年をへて発表されたのが、今回の「販売検討」だった。