エンジン車の元技術者、ネットにはびこる“EVアンチ”を叱る 「イノベーションに敬意を持て」

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内燃機関原理主義者はインターネットにも現れ、自説を一方的に垂れ流す。もちろん記事にコメントするのは自由だが、まずすべきは、記事を熟読し、その内容を理解し、反論するなら敬意を持って行うのが最低限のルールではないのか。

内燃機関原理主義者が生まれる理由

OECDが2018年に実施した国際比較試験。デジタル社会における読み書き能力の開発について(画像:OECD; 21st-Century Readers)
OECDが2018年に実施した国際比較試験。デジタル社会における読み書き能力の開発について(画像:OECD; 21st-Century Readers)

 内燃機関原理主義者はなぜ生まれるのか。心理学的、医学的、人類学的な要因があるため分析は難しいが、いくつかの仮定を立ててみた。

●多様性を受け入れられない
 何事にも背反するものがあり、完全に両立する解は存在しない。従って、個別最適ではなく全体最適を実現するための「最適な妥協案」を見つける必要がある。しかし、「木(EV)と森(脱炭素生態系)の両方を見る」ことは複雑で難しい。人間の脳は本来、同時に多くのことを処理するのが苦手だ。

●意見と事実の区別がつかない
 経済協力開発機構(OECD)の2018年の調査では、意見と事実を区別する能力において、米国と英国は加盟23か国中1位と2位、日本は16位だった。単なる「個人的な意見を『事実』と混同する人」は、現実世界でもインターネット空間でも多い。彼らはメディアの偏向報道を読み、その意見を事実と錯覚し、脳にインプットする。

 テスラとEVに関するニュースを配信するビークルサジェストの記事「Why Is Mainstream Media Publishing Anti-EV Articles? Role of Big Oil in Anti-EV Portrayals(なぜ主要メディアは反EV記事を掲載するのか? 反EV描写におけるビッグオイルの役割)」によると、既存の自動車会社や石油メジャー、政府の政策やイデオロギー(あるいは忖度〈そんたく〉)が記事の偏向を生んでいるという。

●疑り深い日本人
 OECDの調査では、日本は中国や英国を抑えて「最も疑り深い(慎重)」国であることもわかった。これは、新しい技術や見知らぬ人の意見を信用できない「頭の固さ」につながっていると考えられる。

●ヒューリスティック(経験則)
 技術の世界では経験則がよく使われるが、過去の経験が必ずしも未来に当てはまるとは限らず、判断の重大な誤りにつながりかねない。経験則が役に立つのは「理論に裏打ちされた」場合だけだが、そこまでやり切る人は少ない。彼らは、内燃機関の黄金時代の成功体験が今後も続くと錯覚している。

●変化を好まない
 現状維持は簡単で安心できる。だから多くの人は変化を好まない。しかし、彼ら自身が変わらなくても、世界は急速に変化している。その変化についていけないから、変化に反対するのである。

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