産まれる時代を間違えた? スバル「アルシオーネSVX」はバブルあってこそのプレミアムクーペだった【連載】90’s ノスタルジア・オン・ホイールズ(8)

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1990年代は、バブル崩壊後も未来への夢と希望に満ち、国内の自動車産業も活況を呈していた。本連載では、当時のクルマ文化を探るとともに、興奮を読者に甦らせる。

スバルの挑戦

アルシオーネSVX(画像:スバル)
アルシオーネSVX(画像:スバル)

 過去、日本の自動車文化において、その商品ラインアップに大きな動きがあった出来事がいくつかあった。

 最初は1960年代のモータリゼーションの到来とともに訪れたマイカーブーム。そして、その後に巻き起こった1980年代末から1990年代初めに掛けてのバブル経済は、日本車における数々の名車や“迷車”を生む大きな動機となった。1991(平成3)年9月に発売されたスバル・アルシオーネSVXもまた、そんな時代に登場したバブルの申し子的な1台だった。

 1980年代のスバルは正直迷走していたことは否めない。この当時のメインモデルはレオーネ。日本車のなかでは早い時期から4WDを通じてオンロードでの全天候性能をアピールしていたユニークかつ実直な存在だった。

 しかしその実直さとは裏腹に、市場での人気は今ひとつだった。理由は

「外観の地味さ」

だった。そこでスバルは起死回生を図るべく1985(昭和60)年6月に極めてアグレッシブなデザインを採用した2ドアスポーツクーペのアルシオーネを投入する。しかし強烈なクサビ型デザインのボディやオモチャのようなインテリアデザインなど、何かとアグレッシブ過ぎたことが災いして販売台数は伸びなかった。アルシオーネの国内販売台数は約8000台といわれている。

 アルシオーネが販売されていた時期の後半は、まさしくバブル時代と交差していたのにも拘わらず市場での人気が高まることなく、コアなスバルファンのみに支持されるに止まったのである。

 レオーネの不振に加えてアルシオーネの失敗。その結果、スバルは深刻な販売不振に直面していたわけだが、1989年に投入したレオーネの後継車であったレガシィが望外のヒット作となる。これを好機と捉えたスバルは、アルシオーネのフルモデルチェンジを決心。それがアルシオーネSVXだったというわけである。

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