産まれる時代を間違えた? スバル「アルシオーネSVX」はバブルあってこそのプレミアムクーペだった【連載】90’s ノスタルジア・オン・ホイールズ(8)
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大胆デザインと価格の壁

アルシオーネSVXのコンセプトは、アルシオーネを引き継いだプレミアム性の高いクーペだった。
バブル真っ盛りでの開発だったこともあり、アルシオーネとは比較にならないレベルで開発費が投入されていた。イタリアのデザイン開発会社・イタルデザインによるスタイルは極めて流麗。特にガラス面積が極めて大きい航空機のキャノピーのようなルーフは、それまでの日本車では見られなかったものだった。ある意味ショーモデルがそのまま市販されたような現実離れ感があった。
エンジンは新設計かつスバルとしては初だった3.3リッターの水平対向6気筒。駆動システムはハイテクを駆使した最新のフルタイム4WD。スバルのフラッグシップというポジションだけに止まらず、世界水準での高速GTというべきキャラクターだったのが特徴である。
スバル・アルシオーネSVXは発売と同時に大きな注目を集めた。特にそのスタイリングに対する評価は高く、今までスバルの量産車とは一線を画する存在として、スバルブランドのイメージアップに大きく貢献した。折しも前述したとおり、レガシィがヒットしていたこともよい後押しになったといってよいだろう。
しかし、アルシオーネSVXには“運”がなかった。デビューして間もなくバブルは崩壊。バブル全盛期であれば“その場のノリ”で購入してくれたかもしれない層がいなくなってしまったのである。
悪いことにバブルのノリで企画されたアルシオーネSVXは設定された販売価格も高価だった。その価格は最もベーシックな仕様で312万円。最上級グレードは439万4000円というもの。これらの価格帯は同時代の人気2ドアクーペだったトヨタ・スープラに匹敵していた。
トヨタの人気車と同価格帯のスバル車。それが市場でどう評価されるかは、客観的に見れば明らかだった。物珍しさで注目してくれた層こそ少なくなかったものの、実際に購入にまで踏み切ったのはスバルのコアなマニア。そのなかでもさらにコアな存在だった富裕層だったのである。