つくばエクスプレスの8両編成化「2030年代前半」 なぜこれほど時間がかかるのか?

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首都圏新都市鉄道によると、TX8両編成の運行開始は「2030年代前半」になる予定だという。なぜこんなに長い時間がかかるのか。

沿線人口の減少懸念

「TX総合基地」へ向かう専用列車を待つ参加者。筆者撮影(画像:大塚良治)
「TX総合基地」へ向かう専用列車を待つ参加者。筆者撮影(画像:大塚良治)

 開業直前の旅客運賃認可申請時(2004年度)には、改めて予測の見直しが行われ、2010(平成22)年度の1日当たりの輸送人員を27万人と想定した(宮武茂典「つくばエクスプレス開業」『運輸政策研究』Vol.9 No.1、2006年 Spring)。

 その後、コロナ前2019年度の「1日当たり輸送人員」は39万5000人となった(首都圏新都市鉄道ニュースリリース「2022年度 営業実績」2023年5月29日)。同社の2019年度の乗車効率は44.1%だった。東京地下鉄の53%、東急の50.8%には及ばないものの、京王電鉄の42.8%、西武ホールディングスの39.4%などを上回っている(各社『有価証券報告書』)。TXの高い乗車効率を見ると、

「8両編成化は不可欠」

であるように思える。

 しかし、今後沿線人口は減少に向かう。同社は

「当社沿線自治体の人口は現在も増加しており、国立社会保障・人口問題研究所等の将来人口推計においても今後、当面の間は増加し、その後も一定程度の人口が維持される見通しと認識している。このため、当社線の混雑率は6両編成運行を継続した場合、長期間150%を上回ることも想定される」(経営企画部広報課)

との認識を示しつつ、さらに8両編成化の意義を次のように強調する。

「コロナ禍を経験した現在、混雑に対する利用者の許容(不快に感じる)レベルが厳しくなっている。また、今後、他社線との比較により当社線の混雑率が相対的に高くなってしまうとサービス面で劣後することになる。こうした状況を踏まえると、当初からの抜本的な混雑緩和対策としての意義は変わりないと考える」(同)

 確かに、混雑が激しい鉄道では、利用者から忌避されることで利用が減少する可能性はある。広域から集客を図り、沿線の定住人口・関係人口・交流人口の増加を図るためには、顧客満足度の維持・向上を図ることの重要性は理解できる。

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