つくばエクスプレスの8両編成化「2030年代前半」 なぜこれほど時間がかかるのか?
TX総合基地の工事制約

首都圏新都市鉄道は
「TX総合基地から資材運搬列車で資材を運ぶが、最高時速は30km程度と低速であることと、終電から始発までの2~3時間という制約のなかで、工事を早めることは難しいことが主な理由だ。加えて、日々の安全運行の継続に必要な既存設備の保守メンテナンス作業も確実に実施する必要があることも大きな要因になっている。このため、保守メンテナンス作業と8両化工事の作業調整等で制限が生じることもある」(経営企画部広報課)
と説明する。
同社によると、すでに2012(平成24)年9月23日始発よりホームの延伸部分が供用を開始した南流山駅以外でも順次工事に着手し、2021年度末までに東京都内地下4駅(秋葉原・新御徒町・浅草・南千住)のホーム延伸のための工事が完了している。引き続き2023年度完成を目指して青井駅、六町駅のホーム延伸工事が進められている。そのほかの駅についても順次延伸工事に着手するほか、TX総合基地の拡張も検討する。8両編成化にともなう必要車両の増備については
「現在、検討中」(同)
という。
TXNRには、列車本数は朝ラッシュ時3本増の25本としているものの、沿線人口は2030年代まで増加し続け、さらなる利用者の増加が見込まれることから、抜本的な混雑緩和対策として「8両編成化事業」に着手すると記載されている。
しかし当初、TXは、8両編成で運行を開始する計画だった。独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道運輸機構)東京支社と首都圏新都市鉄道が2006年3月に発行した『つくばエクスプレス(常磐新線)工事誌』には、
「免許取得時の常磐新線の事業基本計画策定の前提条件は、秋葉原・つくば間の所要時間は約45分、1日当たりの輸送人員は2000年の開業時におよそ47万5千人、2010年には57万6千人を見込み、当初運行車両は1編成数8両、将来は1編成10両であった」(9ページ。元号を西暦に修正のうえ引用)
と記されている。
常磐新線は、2000年度工事完成、建設費7998億円でスタートしたが、都市計画決定の遅れ等から工事完成が早くても2005年度となることや建設費総額が1兆2000億円に達する可能性などが1995年頃に判明し、運輸省(当時)・首都圏新都市鉄道・鉄道建設公団(同)によってプロジェクトの見直しが行われた。この結果、1日当たりの輸送人員は2010年38万2000人、2020年48万8000人に予測がそれぞれ修正された(以上、同工事誌13ページ)。