渋谷の再開発は成功する? IT企業大量誘致で“オフィス都市”の未来、ポストコロナの東急の戦略とは

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東急が提唱する「私鉄3.0」とは何か。

東急の経営危機

渋谷高層ビル群(画像:写真AC)
渋谷高層ビル群(画像:写真AC)

 2020年の年明けから本格化したコロナ禍によって、鉄道会社は大きなダメージを受けた。緊急事態宣言やリモートワークの普及によって、鉄道会社の経営を支えていた通勤客が大幅に減ってしまったからだ。

 関東を代表する私鉄である東急(東京都渋谷区)も、2020年度にグループの連結決算で1000億円弱の営業利益を目指していたが、逆に

「300億円を超える赤字」

に転落した。東急ではグループをあげての渋谷の再開発も進んでいただけに、その出ばなをくじかれた格好になった。

 こうしたなかで、東急の前身となる目黒蒲田電鉄が設立された1922(大正11)年から100年たった2022年の年末に刊行されたのが本書、東浦亮典『東急百年』(ワニブックス)である。

 著者は東急の常務執行役員であり、基本的には、東急の歴史と現在の戦略、今後の展望について語った本であるが、新型コロナウイルスの流行をはじめとする想定外の事態についても書かれており、自社にとって都合のよいストーリーを並べただけのものではない興味深い本になっている。

 2020年の4月には首都圏で緊急事態宣言が出され、不要不急の外出の自粛が呼びかけられた。当然ながら、鉄道の旅客も激減した。

 鉄道会社は運賃という

「日銭」

が入り、さらに都市部の鉄道では定期券という形で運賃の前受けができるためにキャッシュフローがよいのが特徴だが、運賃収入は激減し、さらに定期の払い戻しによって現金が流出する事態となった。また、東急は鉄道以外にも百貨店や映画館、ホテルなども経営していたが、これらの需要も激減してしまった。

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