渋谷の再開発は成功する? IT企業大量誘致で“オフィス都市”の未来、ポストコロナの東急の戦略とは
東急が提唱する「私鉄3.0」とは何か。
住民動向の変化
こうした状況に対して、鉄道部門では、混雑緩和によって駅での停車時間に余裕があることに気づいた現場からの提案で、電車を無理に加減速せずに、少し速度を落として走らせるということがなされた。
1編成10両であれば、各駅1秒ずつ加速時間を減らすと電気代が10円ずつ節約でき、それが積もり積もって、2021年度は
「4億円強の経費節減」
になったという。
コロナは人々の住まいに関する考えにも影響を与えることが予想された。リモートワークが普及するなかで、わざわざ都心部の費用のかかる住宅を選ばなくても、郊外や地方で余裕のある生活を送ることが可能になると思われたからだ。もし、地方への移住が広がれば、東急のような通勤客がメインの鉄道会社にとっては大きなマイナスになる。
では、実際のところはどうだったのか。
コロナの影響が出る前の2020年1月時点では東急沿線の17市区合計で約552万人が住んでいたが、2021年1月には約1万2500人も減少した。特に大田区では約5000人が転出したという。さらに1年後の2022年1月になると、神奈川エリアも減少に転じ、東京エリアで約1万2000人、神奈川エリアで約2200人減少した。
しかし、2022年7月には東京も神奈川も増加に転じ、東急沿線全体で約1万1600人増となった。コロナ禍前の2020年1月と2022年7月を比較すると、東京エリアは約1800人の減少となったが、神奈川エリアでは約2万8000人の増加となり、東急沿線全体で約2万6200人の増加となった。
これらのデータからは、緩やかではあるが、東京区部から郊外への人の移動があったことがうかがえる。鉄道事業者からすると、再び
「郊外の開発」
が重要になってきたといえるだろう。