中国“一帯一路”の一翼を担う「日本通運」 中国~欧州を結ぶ国際定期貨物列車の可能性とは?【連載】方法としてのアジアンモビリティ(9)

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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。

コロナ禍で向上した中欧班列の優位性

鄭州市の隴海線貨物駅、圃田西駅を出発する中欧班列。圃田西駅は中国でも最大級の貨物ターミナルである(画像:ウインドメモリーズ)
鄭州市の隴海線貨物駅、圃田西駅を出発する中欧班列。圃田西駅は中国でも最大級の貨物ターミナルである(画像:ウインドメモリーズ)

 この間、日通はユーラシアトレインダイレクトの取り扱い可能都市を拡大してきた。当初、中国発は武漢、重慶、哈爾濱(ハルビン)のみ、欧州発はデュイスブルク、ハンブルク発のみだったが、2017年5月には、中国発を成都、西安、浙江省義烏(ギウ)にも拡大、欧州発をブレスト(ベラルーシ)、マドリード(スペイン)、ブダペスト(ハンガリー)などにも拡大した。

 日通はまた、東アジアと欧州を結ぶ鉄道輸送の要衝であるカザフスタンとの関係を強化してきた。2017年8月には、国有鉄道であるカザフスタン鉄道(KTZ)、その子会社でロジスティクス業務を取り扱うKTZエクスプレスと業務提携している。

 こうした動きもまた、中欧班列を推進する中国政府の動きと歩調を合わせものだったように見える。日通が取り扱い可能都市拡大を決めた2017年5月、北京で開催された一帯一路国際協力首脳会議で、中国国務院が2020年までに中国43都市から年間5000本のブロックトレイン運行を目標とすると表明していたからだ。

 2020年以降、新型コロナウイルスの影響で、航空、海上での輸送が滞ったこともあり、中欧班列によるコストやリードタイムの優位性が増し、急速に運行本数が拡大していった。

 2021年11月には、日通が中国事務所を設立してから40周年を記念し、上海市で記念式典が開催された。ここで、同社の杉山龍雄常務執行役員は次のように述べている。

「中国の交通大国構想を加速させ、全力を尽くして“グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー”を目指して世界の物流発展に貢献することを約束します」

 2023年8月3日には、「2023年中国物流情勢発展分析会兼物流企業50強フォーラム」が武漢市で開催され、「中国物流企業トップ50」が選出された。トップ50企業に日系企業として唯一ランクインしたのが、日通グループ会社の

「NX国際物流(中国)有限公司」

だった。2017年から7年連続での受賞となる。中国では、一帯一路の一翼を担う日通への期待が、ますます高まっている。

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