中国“一帯一路”の一翼を担う「日本通運」 中国~欧州を結ぶ国際定期貨物列車の可能性とは?【連載】方法としてのアジアンモビリティ(9)
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ユーラシアトレインダイレクト拡大推進

日通は2016年10月、日本人、中国人、ロシア人、カザフ人による特別チームを設置するとともに、中国と香港の現地法人でも30人規模の拡販チームを結成し、ユーラシアトレインダイレクトの拡大を推進してきた。
当初はコンテナ貸し切り(FCL)サービスと混載輸送(LCL)サービスを提供していたが、2019年には定時運行による信頼性向上や、リードタイム短縮を目指し、中欧班列のブロックトレイン(自社で一列車を編成)の運行に乗り出した。
このブロックトレインの準備を進めていた2018年10月16日、日通は日本貿易振興機構(ジェトロ)上海事務所との共催で、上海市で「中欧鉄道利活用における日中第三国市場協力シンポジウム」を開催している。
この場で日通は、ユーラシアトレインダイレクトの状況について紹介するとともに、日系企業の期待に添えるように、ブロックトレインの実証実験を進めていることをアピールした。こうした同社の動きは、日中第三国市場協力の機運を盛り上げる上でも重要だったように見える。
冷え込んでいた日中関係を打開すべく、安倍晋三総理(当時)が中国を公式訪問し、習近平国家主席、李克強首相と首脳会談を行い、日中第三国市場開拓での連携で合意したのは、その10日後の10月26日だったからだ。
さらに日通は、日本企業にとってのユーラシアトレインダイレクトのメリットを拡大するため、複合サービスの提供も始めた。2018年5月には、海上輸送と中欧班列を組み合わせた「ユーラシアトレインダイレクト(シー&レール)」、航空輸送と中欧班列を組み合わせた「ユーラシアトレインダイレクト(エア&レール)」をスタートしている。
シー&レールは、日本の主要港(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸)から大連までの海上輸送と、大連からデュイスブルクまでの鉄道輸送を組み合わせた。これにより、東京港からデュイスブルク鉄道ターミナルまでのリードタイムは最短で28日となった。
一方、エア&レールは、日本の主要空港(成田、羽田、中部、関空)から重慶までの航空輸送と、重慶からデュイスブルクまでの鉄道輸送を組み合わせた。