中国“一帯一路”の一翼を担う「日本通運」 中国~欧州を結ぶ国際定期貨物列車の可能性とは?【連載】方法としてのアジアンモビリティ(9)
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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。
25か国に乗り入れる中国の貨物列車

中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車「中欧班列」の需要が拡大している。中国国家鉄路集団有限公司(国鉄集団)によると、2023年1~6月の運行本数は前年同期比16%増の累計8641本に達した。
2011年に中国の重慶市とドイツのデュイスブルクを結ぶ路線からスタートした中欧班列は、2013年に習近平国家主席が一帯一路構想を提唱して以来、その中核事業として急速に発展してきた。いまや中欧班列は中国と欧州25か国の217都市に乗り入れており、累計7万7000本が運行され、輸送貨物総額は3400億ドルを超えた。
この中欧班列の需要拡大をけん引し、その発展の一翼を担っているのが日本通運(東京都千代田区)だ。同社はすでに2015年11月から中国欧州間クロスボーダー鉄道輸送サービス(その後「ユーラシアトレインダイレクト」)を開始している。
同社は、航空輸送、海上輸送と比較した際の中欧班列の優位性を強調する形で需要を喚起してきた。
例えば、武漢からハンブルクまでのリードタイムは約14日とし、同区間を海上輸送した場合と比較して約25日の短縮となることを強調した。また、輸送コストは、航空輸送の約8分の1に抑えられ、海上輸送と比較して2倍程度にとどまるとしてコスト的なメリットと強調、
「第3の輸送モード」
として売り込んだ。
当時、中国沿岸部に生産拠点を置く製造業は、中国内陸部へ生産拠点をシフトし始めていた。このような変化によって、配送のリードタイムとコストが一層重要な課題となっていた。