旅行先で急病になったらどうなる? 飛行機使った搬送手段「メディカルウイング」をご存じか

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2023年、固定翼機を活用した「メディカルウイング」が2024年4月の本格稼働に向け、準備を進めている。いったい何を行うのか。

航空医療体制のスタンダードへ

北海道航空医療ネットワーク研究会のウェブサイト(画像:北海道航空医療ネットワーク研究会)
北海道航空医療ネットワーク研究会のウェブサイト(画像:北海道航空医療ネットワーク研究会)

メディカルウイングは北海道が実施主体となり、北海道航空医療ネットワーク研究会(HAMN)と中日本航空が受託・運営する、固定翼機を使用した患者搬送事業である。

 2010(平成22)年に民間企業の支援を受け、運用が開始された。翌年から北海道の新たな地域医療再生計画で実績を重ね、2017年から北海道・国庫の補助も受けながら事業を拡大中だ。

 最大の特徴は医療機器を搭載し、医師・看護師が搭乗して高度専門医療を航空機内で提供し、長距離搬送が可能な点にある。まさに“空の救急車”といった様相だ。

 特に搬送依頼が多いのは小児先天性疾患。小児先天性心疾患に対応した医療機関は札幌や東京など都市部に集中する。その関係上、利用率は最も高く救命に大きく寄与している。仮に大手航空会社が重症患者を搬送すると想定すると、

・煩雑な手続き
・医療機器の制約

など、かなりの問題がある。その点、メディカルウイングによる搬送可否は医療従事者が判断し、救命処置や生命維持に必要な医療機器を搭載したことで、迅速な搬送体制と搬送環境を実現している。

 またドクターヘリと比較しても、機内スペースを確保することで

「安定した医療処置が可能」

であり、長距離搬送可能な利点がある。

 例えば、最長搬送距離は新千歳空港から関西国際空港までの1180km。ドクターヘリの場合だと拠点から半径50kmが担当範囲だ。メディカルウイングの広域搬送性は高いといえる。一方で、患者情報コーディネートやさらなる搬送時間短縮に対する要望、沖縄や九州地方など、他の地方の搬送体制構築に向けた課題もあり、解決が望まれる。

 メディカルウイングは医学管理が必要な旅行中の患者に対しても、地元病院への搬送実績がある。しかし、担当範囲には限界があり、複数の拠点が必要だ。他の地域でメディカルウイングを運用するには、医師、看護師、パイロット、整備士、整備環境など、さまざまな課題があると推察される。

 現状、大手航空会社による患者搬送に頼る場合もある。

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