小田急バス「192便運休」の衝撃 人手不足という名の「猛毒」は都内にも本格的に回ってきた

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小田急バスは8月以降、新型コロナウイルスの感染拡大で乗務員の確保ができず、大規模な運休が続いている。武蔵境営業所と吉祥寺営業所が運行する路線を運休・減便した。運休したのは平日のダイヤで、吉祥寺営業所では8月14日から吉祥寺駅と深大寺を結ぶ「吉04」などを運休した。

平時でも乗務員不足

一畑バスのウェブサイト(画像:一畑バス)
一畑バスのウェブサイト(画像:一畑バス)

 感染拡大の影響による人手不足は、航空業界でも発生している。2022年、コロナ禍による相次ぐ欠航で一時的なパイロット不足に直面した。しかし、航空業界は報酬を増やすことでパイロット不足を補った。

 この報酬アップは人手不足を解消し、万が一の事態に備えるための最善の方法だが、バス業界にとっては極めて難しい。コロナ以前から、バス業界は減収による

・待遇悪化
・人手不足

という問題を抱えていた。コロナ禍による乗客数の減少がこれに拍車をかけた。

 その結果、平時でも乗務員不足でバス運行が困難になった地方バス会社もある。例えば、長崎県の島原鉄道(島原市)は、本諫早駅・諫早駅と長崎空港を結ぶ1日8往復の長崎空港線バスを8月28日から全面運休している。同社にはコロナ以前、73人の乗務員がいた。しかし、現在は51人で、運行に必要な人数に8人足りない。同社は人員が確保でき次第、運行を再開すると発表しているが、見通しは明るくない。

 島根県で運行する一畑バス(松江市)も、ドライバー不足のため8月から減便している。コロナ以前は122人の乗務員がいたが、コロナによる乗客減で希望退職が相次ぎ97人にまで減少、十分なサービスを提供できない状況だ。運転免許取得費用に加え、第二種運転免許取得年齢の引き下げにともない高校生の採用を増やしたが、2023年度の新卒乗務員の採用はゼロに終わった。

 こうした地方のバス会社に比べて、首都圏のバス会社の経営は安定しているが、乗務員の確保に苦慮しているのは確かだ。人手不足という名の「猛毒」は都内にもすでに回っている。迅速かつ適切な対応が急がれる。

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