小田急バス「192便運休」の衝撃 人手不足という名の「猛毒」は都内にも本格的に回ってきた
小田急バスは8月以降、新型コロナウイルスの感染拡大で乗務員の確保ができず、大規模な運休が続いている。武蔵境営業所と吉祥寺営業所が運行する路線を運休・減便した。運休したのは平日のダイヤで、吉祥寺営業所では8月14日から吉祥寺駅と深大寺を結ぶ「吉04」などを運休した。
首都圏バスの行方

このような背景から、学校、保育園、病院などの施設では感染防止対策が続けられている。そのような施設に比べ、交通機関では5類に移行して以降、感染対策がおろそかになっている。駅やバス停での感染対策は低下し、マスクを着用する乗客も減っている。
危機意識が低下するなかで、バスは極めて危険な交通機関となっている。乗務員と乗客、乗客と乗客との距離が近い。そのため、ここ数年、多くのバス会社が感染症対策に注意を払っている。乗務員の近くの座席を密閉したり、乗務員にマスクの着用を義務付けたりしてきた。
しかし、5類への移行にともない、これらの制限は緩和され、感染対策に対する社会的な意識も低下している。小田急バスの大規模運休は国民の感染症に対する意識が「緩んだ」結果ともいえる。
そんななか、首都圏のバスは今後どうなるのか。乗務員への感染拡大により、再び多くのバス会社で運休や減便が発生することは容易に想像できる。
感染拡大の数年間、路線バスは鉄道よりも運休や減便が多かった。例えば、第6波となった2022年3月、首都圏の多くのバス会社が運休や減便を余儀なくされた。小田急バスは武蔵境営業所で98便を運休、西武バスは上石神井営業所で2路線を約1割減便、東急バスや関東バスは平日・土日ダイヤでの運行や臨時ダイヤの編成を余儀なくされた。
このように運休や減便が相次いだ背景には、多くのバス会社が常に限界ギリギリの人数で運行をしているからだ。感染拡大による相次ぐ運休は、バス会社に人手不足の解消について考える機会を与えた。しかし、この問題を解決できている会社は少ない。