津軽海峡フェリー復活、「室蘭~青森」の決め手となる需要は何か? 苦汁の過去も2024年問題で追い風か
室蘭~青森航路誕生の経緯
にもかかわらず、なぜこのような航路が作られたのか。理由は2024年問題である。2024年問題の原因である働き方改革によって、労働時間などの規制はもともと2019年から始まる予定だった。川崎近海汽船はこれを前提に室蘭~宮古航路を設定した。乗船時間が10時間あれば十分な休憩時間が確保できると判断したのだ。また、宮古からのアクセスは三陸沿岸自動車道(八戸~仙台、2020年全線開通)が便利だと考えられていた。
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しかし、労働時間の開始が延期されたことなどにより、このメリットはまったく使えなくなった。むしろ乗船時間が長いことによって敬遠される航路になってしまったのである。そこで、室蘭~八戸に路線を変更することで再起が図られた。しかし前述のように、需要はまったく伸びなかった。もし路線が存続していれば、2024年問題が近づくにつれて利用が増えたかもしれない。しかし、そこで存続を期待するのは難しいほど需要がなかった。
こうした前提を知った上で、室蘭~青森航路はどのような構想のもとに誕生したのだろうか。就航を決めた津軽海峡フェリーは、青函フェリーとともに函館~青森航路を担っている会社だ。2009(平成21)年には東日本フェリーが運航していた函館~大間航路も引き継いでいる。
そんな同社が新航路の就航に踏み切った理由は、やはり2024年問題である。同社の主要航路である函館~青森航路は、24時間運航している物流大動脈である。しかし、所要時間は短く、乗船時間はわずか3時間40分である。一方、室蘭発のフェリーは約7時間で、十分な休憩時間を取ることができる。2024年問題でドライバーに休憩が必要になったこともあり、同社はここにチャンスを見いだしている。室蘭港発着の航路を設定することで、
・苫小牧港で乗船できずに函館港に流れる自動車の受け皿になれる
・道央の物流を担うことができる
というメリットがある。しかし、室蘭港が苫小牧港に劣るのは明らかだ。
前述したように、札幌からの距離で室蘭は苫小牧に及ばない。両港の距離は70kmほど。それでも、かつては港湾開発やフェリー航路の誘致をめぐって両港が争い、「苫蘭戦争」と呼ばれた時代もあった。