津軽海峡フェリー復活、「室蘭~青森」の決め手となる需要は何か? 苦汁の過去も2024年問題で追い風か
輸送が伸び悩んだ理由
室蘭港はかつて、本州を往来する多くのフェリーが発着する港であった。室蘭港と大洗港(茨城県)、直江津港(新潟県)、対岸の青森港、大間港、八戸港を結ぶフェリーが就航していた。さらに一時期は、直江津を経由して博多に至る長距離ルートがあることも知られていた。
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しかし、モータリゼーションの発達に加えて、後述する苫小牧港との競争により、室蘭発着のフェリー航路は次々と姿を消していった。最後に残った東日本フェリーの室蘭~青森航路も2008(平成20)年11月に休止となり、室蘭港発着のフェリーは一度消滅した。
室蘭への定期航路が復活したのは、それから10年後の2018年6月のことだった。川崎近海汽船(東京都千代田区)が室蘭~宮古(岩手県)航路に就航したのである。北海道と本州を結ぶ輸送の足として期待されたこの路線は、当初から不調だった。これを受け、2020年4月に室蘭~八戸にルート変更されたが、トラック・トレーラー年間1万8000台の目標は達成されなかった。
輸送が伸び悩んだ理由のひとつとして指摘されたのが、同じ川崎近海汽船が運航する苫小牧~八戸航路との競合だ。室蘭は札幌までの距離で、苫小牧の約2倍ある。にもかかわらず、室蘭~八戸航路の運賃は苫小牧~八戸航路より2000~6000円安いだけだった。この価格差では、苫小牧のほうが室蘭よりも陸送中の燃料費を節約できる。これはこの航路の致命的な欠陥であった。
にもかかわらず、航路を維持したい室蘭市は、入港料や係留施設使用料(2021年度で約3400万円)を支払い、フェリーターミナルビルの管理費(2500万円)も支払って航路を維持した。このような行政支援があっても、航路を支えることはできなかった。
陸送時の燃料費を考えれば、当初から勝ち目のない航路であったことは明らかである。