「北陸鉄道石川線」存続へ ジリ貧回避に抜本対策必要も、自治体は多額の持ち出し覚悟できるのか

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利用低迷で存廃協議が進められていた石川県の北陸鉄道石川線が存続と決まった。だが、金沢市中心部への延伸など抜本的な対策が講じられなければ、ジリ貧を逃れようもない。

石川線の存続決定

北陸鉄道石川線(画像:写真AC)
北陸鉄道石川線(画像:写真AC)

 利用低迷で存廃協議が進められていた石川県の北陸鉄道石川線が存続と決まった。だが、金沢市中心部への延伸など抜本的な対策が講じられなければ、ジリ貧を逃れようもない。

「石川線をBRT(バス高速輸送システム)化すると、他の路線バス運行に影響が出る」
「バスの運転士が不足している状況では、鉄道として存続せざるを得ない」

金沢市役所で8月末に開かれた石川線の存廃協議。金沢市の村山卓市長ら沿線3市長が出した結論は存続だった。

 石川線は金沢市の野町駅から野々市市を通って白山市の鶴来(つるぎ)駅を結ぶ13.8km。2022年度で年間98万人が利用した通勤、通学の足だが、慢性的な赤字が続き、2022年度は1億2000万円以上の赤字を計上している。

 以前は高速バスなどの黒字で赤字を埋めていたが、コロナ禍でビジネスモデルが崩壊した。このため、北陸鉄道は線路など鉄道施設を地方自治体が保有し、鉄道会社が運行に専念する上下分離方式の導入を沿線3市に要請した。

 3市は石川中央都市圏地域公共交通協議会での議論を経て、鉄道としての存続か、線路を専用道路にしてバスを走らせるBRTに候補を絞った。その最終決定を下すために開催されたのが沿線3市長によるこの日の会合だ。

バス運転士不足が鉄道存続の決め手

野町駅(画像:写真AC)
野町駅(画像:写真AC)

 だが、バス運転士の深刻な不足が決定を左右する。

 北陸鉄道は4月現在で全路線バスの維持に約350人の運転士が必要だったが、30人ほど足りなかった。その結果、4月のダイヤ改正で

・平日:約160便
・土日:約200便

の大幅減便を強いられている。BRTに運転士を割く余裕はどこにもない。

 3市は公費による補助のあり方と短期的に実施できる利用促進策を年内にまとめ、年明けの地域公共交通協議会にはかる方針。利用促進策としては

・バスとの通し運賃
・乗継割引創設
・キャッシュレス化

などが浮上している。金沢市交通政策課は

「どういう支援や利用促進策が効果的なのか、検討していきたい」

と話した。

 しかし、沿線人口は野々市市で今後も若干の増加が見込まれるものの、金沢市や白山市は減少が続くと予測されている。抜本的な対策に着手しなければジリ貧状態から抜け出せず、再び存廃協議に追い込まれることも考えられる。

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