宇都宮LRTに集まる都市再生への熱き期待 日本各地で盛り上がった「LRT構想」を復活できるか? 固唾を呑む地方と、その行方とは
栃木県宇都宮市と芳賀町で8月26日、LRTが開業する。LRTは2000年代に各地で生まれた構想の大半が具体化しないままだが、状況が変わるかもしれない。
8月26日開業
栃木県宇都宮市と芳賀(はが)町で8月26日、次世代型路面電車(LRT)が開業する。LRTは2000年代に各地で生まれた構想の大半が具体化しないままだが、状況が変わるかもしれない。
「上下分離方式など地方都市で公共交通が整備できる方式を採用した。他の都市が続くことができるよう期待に応えたい」
宇都宮市の佐藤栄一市長は7月末の記者会見で、約1か月後に迫った宇都宮LRT開業に向け、決意を述べた。
宇都宮LRTは正式名称が「宇都宮・芳賀ライトレール線」。宇都宮市のJR宇都宮駅東口から隣接する芳賀町の芳賀・高根沢工業団地まで14.6kmを結ぶ。宇都宮市と芳賀町が施設を保有し、第三セクターの宇都宮ライトレールが運行に当たる。国内で路面電車の新線が開業するのは75年ぶりだ。
車依存からの脱却
栃木県は典型的な車社会。宇都宮市中心部と大型工業団地が複数存在する宇都宮市東部、芳賀町間の交通渋滞緩和が整備理由だが、その先には
・車依存からの脱却
・コンパクトシティの実現
がある。佐藤市長は
「社会の持続性を考えると、コンパクトな街に仕上げ、公共交通でネットワーク化しなければならない。それを可能にするのがLRTだ」
と力を込めた。
宇都宮市は平日1日当たりの乗客数を約1万6300人と見込んでいる。工業団地内の本田技研工業は通勤バスを廃止し、LRT利用に切り替える方針を打ち出したが、工業団地で働く人の
「1割程度」
しかLRTを利用しないとする調査結果も出ている。このため、宇都宮市の予測を甘いと批判する声がある。
整備費が当初の約1.5倍に当たる684億円に増えたことも心配される。開業後4年で黒字化し、9年で累積損失の解消を目指す計画に遅れが出そうだが、それでも宇都宮LRTの行方には全国の地方自治体から注目が集まっている。