長野、熊本、石川で「第二の人生」 東京メトロ03系が地方鉄道で“引っ張りだこ”のワケ

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東京メトロ日比谷線で活躍していた「03系」電車が近年、地方私鉄に譲渡され、再び地域の足として走っている。「03系」がなぜ地方で重宝されるのか、解説する。

30年前の「置き換え劇」を再現

東京メトロ03系電車(画像:写真AC)
東京メトロ03系電車(画像:写真AC)

 東京メトロ日比谷線で活躍していた「03系」電車が近年、地方私鉄に譲渡され、再び地域の足として走っている。鉄道車両は引退すれば大半がスクラップされてしまうが、03系の場合は「またとない出物」との呼び声さえあり、各社が注目。20両以上が「第二の人生」を歩みつつある。他にはない03系の特徴や、日比谷線引退のタイミングなどが、地方私鉄のニーズに合致したのだ。

 2023年1月19日、長野電鉄の旧型車両「3500系」の最終運行が行われ、多くの鉄道ファンらが見送った。3500系は、1993(平成5)年から30年にわたって同鉄道を走り続けた車両の仲間だが、もとは東京メトロの前身、営団地下鉄日比谷線で開業当初の1961(昭和36)年から使われていたグループが転用されたものだった。銀色の車体にコルゲート(ひだ)が幾本も刻まれた古めかしいスタイルで、丸みを帯びた前面の「おでこ」の部分が似ているからと、「マッコウクジラ」の愛称でも呼ばれた。

 長野での「第二の人生」も終えたわけだが、代替として導入された新型車両こそ、同じ東京メトロ日比谷線の「03系」だった。03系は1988年に初登場し、その数を徐々に増やしながら「マッコウクジラ」を置き換えていった。その03系が2020年までに引退し、一部が長野電鉄にやって来て再び3500系に引導を渡す―。日比谷線での30年前の「置き換え劇」が長野で再現されたわけである。

 そんな03系だが、譲渡されたのは長野電鉄だけではない。2019年以降、熊本電気鉄道(熊本県)、北陸鉄道(石川県)にも売却され、それぞれ旧型車両を置き換え、活躍を始めている。大都市部でお役御免になった鉄道車両が地方に売却されるのは珍しくないが、どんな車両でもいい、というわけではない。複数の地方私鉄が03系を求めたのは、03系の車体の構造や大きさ、走行装置などが、地方の中小私鉄に適していたからである。

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