タクシー絶対不足が招く「ライドシェア解禁」議論 実利か安全か、菅氏前向き発言で政治色強めタクシー業界の今後どうなる
菅前首相、ライドシェア解禁に前向き

菅義偉前首相がライドシェア解禁に前向きだ。ライドシェアとは「相乗り」を意味し、一般ドライバーが自家用車を使って利用客を運ぶ有料ビジネスを指すことが多い。
朝日新聞デジタルによれば、菅前首相は長野市で行われた講演会で
「現実問題として(タクシーが)足りない。これだけ(運転手の)人手不足になってきたら、ライドシェア導入に向けた議論も必要だ」
と発言した。
8月29日には河野太郎デジタル担当大臣がライドシェア解禁を含む交通・物流のデジタル化を議論するワーキンググループを立ち上げたことを明かした。
自民党には、これまで初乗り料金の統一や米ウーバーの日本進出などの問題に取り組んできたタクシー・ハイヤー議員連盟(会長・渡辺博道復興相)があり、タクシー業界を取り巻く環境は政治色が強いといわれている。
そのような背景があるにもかかわらず、大物政治家がライドシェア解禁を公言するなど、議論に本腰を入れていることがうかがえるが、果たして解禁は近いのか。その可能性を探る。
堅固なタクシー業界

営業権を持たずに営利目的で乗客を運ぶ行為は、いわゆる「白タク」として道路運送法で原則禁止されている。また、
「安全性などに対する懸念」
は拭い去られておらず、ライドシェア導入の動きは今のところほとんど進んでいない。議連による政治力もあるが、一筋縄ではいかないという見方が大勢を占めていた。
2018年には新経済連盟(三木谷浩史代表理事)がライドシェアを道路運送法の適用外とする
「ライドシェア新法」
を提案し、2020年には経済同友会もライドシェアの実現を提言したが、当時の安倍・菅政権下でそれ以上の議論は進まなかった。
前述の菅前首相の発言は、インバウンド(訪日外国人)の急速な回復が背景にある。海外では一般的になりつつあるライドシェアが、“鎖国状態”の日本では普及していないことに対するインバウンドの違和感は、インバウンド増加とともに強まっている。
2014年のウーバーの配車サービス参入は黒船来航に例えられたが、今回の菅前首相の発言は、官民一体でタクシー業界を守る
「旧態依然とした体質」
から脱却するときが来たことを表しているのかもしれない。