トヨタはなぜ米国「EV生産」に踏み切ったのか? “トランプ流”踏襲のバイデンで思い出す、日本車ハンマー破壊の歴史【連載】方法としてのアジアンモビリティ(1)
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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。
「バイ・アメリカン」後退せず

こうしたなか、トヨタは同年3月14日、米国の5工場に7億4900万ドル(約840億円)を投資し、586人の雇用を創出すると発表した。それでもトランプ政権は輸入自動車への追加関税をちらつかせながら日本との貿易交渉を進めた。
トヨタは同年5月17日、
「米国の消費者と労働者、自動車産業にとって大きな後退だ」
「われわれの投資が歓迎されていないとのメッセージをトヨタに送るものだ」
と指摘、10か所の工場を含め、米国内での事業構築に600億ドル(約6兆6000億円)余りを投じてきたと実績を強調した。
結局、同年9月25日の日米首脳会談で、日本製自動車・同部品への追加関税は当面発動されないことになったものの、日本は
「米国産農産物の関税撤廃・削減」
を飲まされた。
2000年の大統領選挙でバイデン氏が勝利したが、政権が交代すれば
「バイ・アメリカンは後退する」
という期待は見事に裏切られた。バイデン氏もトランプ流の政策を踏襲したのである。
バイデン大統領は就任直後の2021年1月25日、米国の政府調達において自国製品を優先するバイ・アメリカン政策の運用を強化する大統領令に署名している。バイデン大統領は2022年3月1日の一般教書演説でも「バイ・アメリカン」を強調し、米国産のEV、半導体の使用を強調したのである。
こうした方針のもと、いまバイデン政権は米国内の雇用拡大を声高に訴えるようになっている。民主党と共和党が「バイ・アメリカン」を競い合う状況下では、ますます日本の自動車メーカーへの要求が強まるだろう。