トヨタ株主総会 米助言会社が「豊田章男会長」選任に反対推奨した本当の理由 賛成率11ポイント減少の裏側とは
豊田会長再任への賛成率が低下
6月14日に実施されたトヨタ自動車(以下、トヨタ)の株主総会で、異変が起こった。同社会長の豊田章男氏の取締役再任への賛成率が84.57%と、前年の95.58%から大きく低下したのだ。議決権行使助言会社の米グラスルイスが、豊田会長の再任に反対するように推奨したことを受けて、海外機関投資家の一部が反対票を投じたと考えられる。
近年、年金基金など、助言会社の推奨にしたがって議決権行使する機関投資家が増えているが、グラスルイスや米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は一定の影響力がある。ISSは会長再任に賛成を推奨したが、グラスルイスが反対を推奨したため、賛成率が低下したと考えられる。
これまで豊田章男氏の経営手腕に対する機関投資家の信任は厚く、同氏再任に対する賛成率は、議決権行使結果の開示が始まった2010(平成22)年以降、93%を下回ったことがなかった。
トヨタの業績は今期(2024年3月期)も好調の見通しで、同社が5月10日に公表した今期営業利益予想は
「3兆円」
と過去最高を見込んでいる。同時に、上限1500億円の自社株買いも発表している。業績好調で、株主への利益配分にも積極的なトヨタの会長再任に対して、グラスルイスはなぜ反対を推奨したのか。
グラスルイスが反対推奨した理由
グラスルイスが問題としたのは、独立社外取締役の
「独立性」
である。
独立社外取締役の候補としてトヨタが選任・提案した4人のうちのひとり、大島眞彦氏がトヨタの主要取引銀行である三井住友銀行の副会長であることから、独立の社外取締役とは認められないとした。そのため、
「取締役会の独立性に懸念がある」
として、取締役会議長を務める豊田会長再任に反対を推奨した。これは、表向きの理由で、本当の理由は別にあると筆者(窪田真之、ストラテジスト)は考えている。
グローバルに脱炭素が進められ、公的年金などの機関投資家に責任投資が要請される時代に、ガソリン車メーカーで世界最大手のトヨタの議案の一部に、なんらかの形で「反対」を表明する必要があったのではないだろうか。