トヨタはなぜ米国「EV生産」に踏み切ったのか? “トランプ流”踏襲のバイデンで思い出す、日本車ハンマー破壊の歴史【連載】方法としてのアジアンモビリティ(1)
- キーワード :
- 自動車, 米国, 方法としてのアジアンモビリティ
急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。
「米国第一主義」とトランプ大統領

ところが、「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は、2016年の大統領選挙で、「バイ・アメリカン」を強く訴え、勝利を収めた。トランプ氏は就任前の2017年1月5日には、トヨタ自動車がメキシコ工場の建設を進めていることに関して、ツイッターで
「米国内に工場を作らないなら、高い関税を払え」
と警告した。トヨタが5年間で米国に計100億ドル投資すると表明したのは、その直後の1月8日だった。
さらに、トランプ政権は自動車や自動車部品への追加関税をちらつかせ、各国との貿易交渉に臨んだ。
トランプ大統領は2018年5月23日、通商拡大法232条に基づき、自動車と同部品の輸入が米国の国家安全保障上の脅威になっていないかを調査するよう商務省に指示した。232条は、輸入増が安全保障上の脅威になっていると認めた場合、大統領は関税引き上げなどの輸入制限を課す権限を認めている。
2019年2月に調査報告を受けたトランプ大統領は、安全保障上の脅威となっていると認定し、輸入自動車に最大25%の関税を課す可能性を示した。当時、日銀出身の大山剛氏が試算したところ、日本からの自動車・部品に対して25%の関税が賦課されれば、日本の自動車産業は
「約2兆円のコスト増」
となり、8社の経常利益の3分の1程度が失われるとの結果が出た。