トヨタはなぜ米国「EV生産」に踏み切ったのか? “トランプ流”踏襲のバイデンで思い出す、日本車ハンマー破壊の歴史【連載】方法としてのアジアンモビリティ(1)
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優遇対象から外れた日欧韓メーカー

トヨタ自動車は5月31日、2025年から米ケンタッキー州で電気自動車(EV)の生産を開始すると発表した。米国でのEV生産は初めてとなる。
同時に、EVの主要部品である車載電池をつくるため、ノースカロライナ州に建設中の電池工場に新たに21億ドル(約2900億円)を投資すると発表した。この決定の背景には何があるのか。
米国では2022年8月にインフレ抑制法が発効し、EV車両の購入に際し、1台当たり最大で7500ドルの税額控除が受けられることになった。ところが、対象となる車両の最終組み立ては北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていることがその要件となった。
米国のEVの平均価格は
「6万ドル(約800万円)台」
とされており、税額控除があれば1割超も安くなる。税額控除が受けられなければ、価格競争力を確保することができない。
ところが、バイデン政権が4月17日に公表した、EV購入の際に税優遇の対象となる車種の新たなリストから、日欧韓メーカーの車が全て外れてしまったのだ。
バイデン政権のもくろみ

バイデン政権がこうした措置をとる背景には、
「米国の雇用拡大」
という強い要請がある。
バイデン大統領は、4月25日に大統領選再出馬を表明したが、最初の演説の場に選んだのは、労働組合の会合だった。ここでバイデン大統領は、
「米国の労組がなければ、私はここに立っていなかっただろう」
とアピールした。
バイデン大統領は6月17日、労働組合員の集会で演説し、
「私がやってきた全てのことの核心的な原則のひとつは『米国で生産せよ』というものだ」
と言明している。
さらに、バイデン大統領は6月28日にはイリノイ州シカゴで演説し、
「バイデノミクスとは、トップダウンではなく、中間層や低所得者層から経済を構築することだ」
と語り、大統領選に向けて米国内への投資や雇用創出を促す方針を示した。米国の雇用問題が、再び日本の自動車メーカーを直撃する時代になっているのだ。