EVの「サーマルマネジメント」が競争激化 先頭テスラを追うのは?【和田憲一郎のモビリティ千思万考3】

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近年、EVのサーマルマネジメントの分野で次々と新技術が開発されており、各社とも力を入れていることが分かる。ではなぜ今、サーマルマネジメントが必要なのだろうか。最近起こっていることと、その背景や今後の動きについて、筆者なりの考え方を紹介したい。

なぜ今、サーマルマネジメントなのか

テスラのオクトバルブ(画像:Munro Live)。
テスラのオクトバルブ(画像:Munro Live)。

 ドイツ自動車工業会(VDA)とメッセ・ミュンヘンが共催した国際モーターショー「IAAモビリティ2021」(通称・ミュンヘンモーターショー)が、2021年9月7日から開催された。その中で筆者が注目したのは、シェフラー(Schaeffler)が発表した最新サーマルマネジメントシステム(TMS)である。全体像は不明だが、シェフラーは、周囲の環境や運転状況に合わせてバッテリー、モーター、パワーデバイスの温度を継続的に調整するとともに、室内の温度も制御し、可能な限り航続距離を確保するとしている。

 今後、シェフラー製部品をどのメーカーが採用するのか分からないが、すでに類似の構想はフォルクスワーゲン(VW)の電気自動車(EV)「ID.3」でも採用している。VW版オクトバルブと呼ばれるもので、膨張/遮断用の空調制御バルブ8個が空調システムを取り巻くように設置されている。ただし、筆者の印象でも、まだ各種バルブは統廃合されていないように見受けられ、後述するように、テスラのオクトバルブ構造を模倣した段階のようにも見える。

 さて、オクトバルブ云々の前に、なぜEVでサーマルマネジメントが必要なのかを説明したい。EVの場合、一充電走行距離の比較はガソリン車と同様、WLTCサイクル試験法に基づき行うことが多い。しかし、この試験法は外気温の変化や冷暖房なしの条件である。しかし実使用時は、走りに加え、バッテリー、モーター、インバータなどの冷却、ガラスからの放熱、冷暖房などにもバッテリーのエネルギーを使ってしまう。このため、いかに効率良く熱のエネルギー管理を行うかが大切になってくる。これがサーマルマネジメントである。

 そのサーマルマネジメントの中でも、最も消費量が大きいのが暖房機能だった。エンジンの排熱が利用できないEVの暖房方法といえば、筆者がEV開発に携わっていた時代は、PTCヒータ方式である。低外気温時に、暖房性能や防曇機能を確保しようとすると、PTCヒータ方式が最も即効性があった。しかし、PTCヒータは暖房即効性には優れているものの、多くのエネルギーを消費するという欠点がある。その後はヒートポンプ方式も生まれた。暖房の熱源として大気の熱を利用するため、PTCヒータ方式と比較すると、少ないエネルギーで暖房ができる特徴がある。しかし、ヒートポンプは低外気温時の暖房性能が劣ることから、ヒートポンプと小型のPTCヒータをダブルで装着する方式なども生まれてきた。近年は、ヒートポンプ方式に対して、電動コンプレッサーで一度圧縮した冷媒の一部を再度電動コンプレッサーに戻して圧縮するガスインジェクションヒートポンプ方式も誕生している。