「ポスト内燃機関」へ早めの備えを 車&“それ以外”の現状【和田憲一郎のモビリティ千思万考2】

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「脱炭素」の流れは内燃機関への逆風となり、その強さは増している。規制対象はガソリン車・ディーゼル車はもちろんだが、自動車以外も例外ではない。欧州の「Fit for 55 package」を軸に、内燃機関製品の現状と今後の展開を考える。

「Fit for 55 package」の今後を考える

電動化が進むJCBの建設機械などの製品(画像:JCB)。
電動化が進むJCBの建設機械などの製品(画像:JCB)。

 内燃機関に対する規制が強まっている。ニュースでは主にガソリン車、ディーゼル車廃止に関する規制の動きが報道されるが、果たしてそれだけだろうか。これから起こっていくことを俯瞰していかないと、産業構造の変化を見誤ってしまうように思える。筆者なりの今後の見方を示してみたい。

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 2020年9月の米国カリフォルニア州知事による2035年ガソリン車、ディーゼル車禁止の新ZEV規制宣言に始まり、2021年8月にはバイデン政権が、2030年に新車販売の半分以上をゼロエミッション車(PHEV含む)とする電動化目標を発表した。

 しかし、最も強烈なのは、7月14日に欧州委員会が包括案として提示した「Fit for 55 package」であろう。元々は、2030年の温室効果ガス削減目標を、1990年比で少なくとも55%削減を達成するための政策パッケージであることから「55」という数字が出ている。日本では、「2035年にガソリン車・ディーゼル車のみならず、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車を含む全ての内燃機関車の販売を禁止する包括案」と報道されている。これは自動車の環境に対する影響が大きいことを考慮してのことである。

 しかし、包括案全体を見れば、排出権取引制度、炭素国境調整メカニズム、エネルギー関係、乗用車、航空燃料、海運など数多くの法案が含まれており、筆者がざっと数えただけでも法案の全体量は約4000ページに及ぶ。これら全てが7月14日に包括案のパッケージとして公表されている。法制化のためには、欧州連合理事会や欧州議会の承認を得る必要があるが、すでに各業界団体と水面下での調整もあったと思われ、どれくらい前から準備してきたのかと驚くばかりである。

 さて、この包括案の基本的な考え方は、全ての領域においてゼロエミッションを推進することにあり、今後もっと大きな投網がかかると予想したほうが良い。例えば、今回の規制は乗用車と小型商用車を規制の対象としているが、大型トラックに関しても、第2弾として追加規制される可能性が高い。これは、米国カリフォルニア州が新ZEV規制発表の後、すぐに大型トラックに関して、重量などを分類しながら2045年以降ゼロエミッション車とすることを打ち出したことと同様である。

 また、欧州では、地中海、バルト海など海に面した地域が多く、今回の包括案でも海上輸送に規制がかかっている。ディーゼルエンジンなどを多用する船舶に対して、電気、水素などを活用したゼロエミッション化への新技術開発を促進する狙いがあるようだ。法案では2025年からスタートし、2050年には現在比で75%の二酸化炭素(CO2)排出量を減らす指針を示すなど、フェーズインにて細かく規定されている。今回の包括案では明らかになっていないが、他にディーゼルエンジンを活用しているものと考えると、建設機械、農業機械などもあるだろう。