物流「2024年問題」政府の対策は遅すぎる! よみがえる90年代以降“規制緩和ブーム”の悪夢、荷主の不当要求は本当に改善されるのか

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3月31日、岸田首相は「我が国の物流の革新に関する閣僚会議」を開催し、物流政策パッケージの取りまとめを指示した。規制まで残り1年。対応が遅すぎるのではないか。

「事前規制から事後規制へ」が理念だったはず

事前規制から事後規制(チェック)への転換をうたう「規制緩和白書」(画像:総務省)
事前規制から事後規制(チェック)への転換をうたう「規制緩和白書」(画像:総務省)

 ただし、トラックドライバーは昔からこのような状態だったわけではない。かつてドライバーは「稼げる職業」の代名詞だった時代もあったのだが、この30年ほどの間にその地位は大きく低下した。

 その原因が何か、といえば、周知のとおり

「規制緩和」

である。ドライバー給与の著しい低下や、ワークライフバランスの悪化という現在の問題は、規制緩和によって各種の規制が取り払われ、トラック会社同士の競争が激化したことの必然的な帰結である。

 ただし誤解してほしくないのは、規制緩和ブームの当時も、規制を無くせば良いと無邪気に考えられていたわけではないということだ。悪質な業者を放置すれば当然、「悪貨が良貨を駆逐する」ような状態になることは容易に予想できたわけで、そのため、規制緩和と同時に、厳しい事後チェックもセットで導入する必要があるというのが、当時の共通認識であった。当時の「規制緩和白書」の表紙にも書かれているとおり、

「事前規制から事後規制へ」

というのが当時の合言葉だったのである。

 ところが、トラック運送業の場合、運送業への参入には国の免許が必要といったさまざまな事前規制は先行して撤廃されたのだが、本来セットであったハズの事後規制は、特に荷主との関係では骨抜きになってしまった。

 この理由は単純に説明することは難しいが、いずれにせよ、これが現在、物流危機が生じていることの根源的な原因であることは疑いがない。「荷主に規制的措置を導入」するという今回の政府の動きについても、このような文脈で考えるならば、その必要性は明らかだといえるだろう。

 今回の政府の動きがどのような結論に至るのか、現時点では予断を許さない状況だが、荷主に対する実効性のある措置が導入されることを期待して、推移を見守りたい。

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