「多摩田園都市」はなぜ多摩ニュータウンに圧勝したのか? 人口60万人規模に大成長、カギは「電車を作って → 人を集めた」だった
多摩ニュータウンと多摩田園都市は一見共通点が多いのに、結果としては明暗が分かれる形となった。今回は多摩田園都市の歴史を振り返る。
開発の「成功」は誰のものか

以上を見てくると、電鉄が地域の開発で主体となって、交通手段を中心として行った開発の方が、主導権のはっきりしなかった行政主体のニュータウン開発より「うまくいった」ように見えてくる。そう割り切っていいかどうか、最後に少し考えてみたい。
そもそも開発が「うまくいった」とは、誰のどの視点から見るべきことだろうか。開発主体がもうかったかというデベロッパーの視点や、より多くの人口を収容できたかという為政者の視点で見るのは、明らかに偏頗(へんぱ)だろう。旧住民が豊かになれたかもひとつの視点だが、やはりそこに住むことになった人びとが満足しているかどうかであろう。
そこで沿線別にアンケートした結果をまとめた、「街の住みここち沿線ランキング2022<首都圏版>」(大東建託調べ)を見てみよう。これによると、多摩ニュータウンに当たる小田急多摩線(新百合ヶ丘~唐木田)は20位、京王相模原線(調布~橋本)は33位と、そこそこの順位につけている。
いっぽう多摩田園都市は、東急田園都市線の江田~中央林間が16位、二子新地~あざみ野が29位と、若干多摩ニュータウンを上回っているが、人口で3倍の差がついたほどの格差ではない。全体として言えば、どちらもまずまず住民は満足しているといえそうである(ちなみにこのランキングの首位は、田園調布を含む東急東横線(代官山~多摩川)である)。
このアンケートにはさまざまな分野での順位が挙げられているが、多摩ニュータウンの路線が田園都市線より上位につけているといえそうなのが「静かさ治安」の項目(小田急多摩線が首位!)と、「物価家賃」、「防災」などである。これは皮肉にも、人口が当初の予定ほど密にならなかったため、静かで災害にも強く家賃も低めと言えるかもしれない。