列車の「スプレー落書き」全部覆ってしまえ! イタリアの大胆対策にあった思わぬ落とし穴とは

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スプレー塗料を使った落書きは重大な犯罪行為だ。ヨーロッパの鉄道の落書き対策について、紹介する。

1990年代から増加

非常に見苦しく不快な落書き被害だが、犯人と鉄道会社のいたちごっこが続いている(画像:橋爪智之)
非常に見苦しく不快な落書き被害だが、犯人と鉄道会社のいたちごっこが続いている(画像:橋爪智之)

 スプレー塗料(スプレー缶入りの塗料)を使った落書きは、いついかなる時でも、どのような場所であっても重大な犯罪行為だ。景観が著しく損なわれることはもちろん、日本であれば器物損壊罪に問われることになるだろう。もちろん海外でも、現行犯で逮捕されれば厳罰が待っているが、現実にはなかなか捕まえることは難しい。

 そもそも落書きと称しているスプレー塗料による絵や文字などは、元々1970年代にアメリカで始まったとされ、当初は広告主のない空き広告に紙を張って描く、芸術作品としても一定の評価がなされるものだった。しかし、その後はモラルの低下で、いつの間にか商店や家の壁が、好き放題に落書きされるようになってしまい、鉄道車両や施設へ飛び火していったのだ。

 アメリカ発祥のこうしたあしき文化は、間もなくヨーロッパへと渡り、筆者(橋爪智之、欧州鉄道フォトライター)が記憶している限りでは、1990年代には、落書きが増えてきていたと認識している。鉄道車両へも同じ頃から落書きが目立つようになり、2000年代になると、落書きをされていない車両を探す方が難しいのでは、と思うまでになった。

「若い頃、落書きをしていた」というドイツ人の青年は、自分の住んでいるケルンでは絶対に落書きをせず、仲間と車に乗ってハンブルクやベルリンの郊外にある車庫へ行き、手早く落書き行為を済ませ、終わったら速やかにその場を離れ、町からも出ると語っていた。地元でやっていると、万が一の際にすぐに面が割れてしまうから、と完全に“プロ”のやり口だ。

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