時刻表トリックが使えない? 昭和・平成人気の「鉄道ミステリー」がいまや瀕死状態なワケ
鉄道ミステリーは昭和・平成時代に人気だったが、現在衰退の一途をたどっている。その背景にはいったい何があるのだろうか。
最高峰は『西村京太郎トラベルミステリー』
日本の鉄道は昭和の高度経済成長期に隆盛を極めたが、航空機や高速バスが台頭してくると、ローカル線や夜行列車が衰退の一途をたどった。元号が現在の令和に変わると、鉄道ミステリーも衰退していく。
その最高峰は、テレビ朝日の『西村京太郎トラベルミステリー』である。2時間ドラマ番組の先駆者である『土曜ワイド劇場』の看板企画で、当時は亀井定雄刑事を演じる愛川欽也を主役に据え、十津川省三警部を演じる三橋達也が警視庁捜査1課内で指揮をとりつつ、主要な場面で現場に出ていた。
このシリーズ最大の見せ場は時刻表トリックだ。頭脳明晰(めいせき)と思われる犯人が「列車に乗った」というアリバイを主張しても、疑問を感じる亀井刑事と十津川警部が時刻表を見て推理したあと、実際の列車に乗車し、計画殺人のルートを見破るもの。
特に「愛と死の飯田線」は、ふたり組の女性と男性ひとりが飯田線の上り各駅停車豊橋行きに乗車。女性ひとりが昼寝を理由に隣の車両に移ったあと、途中駅で下車し、高速バス、エル特急(現・特急)「しなの」を乗り継ぎ、愛知県内で男を殺す。犯行後、東海道新幹線と飯田線の下り各駅停車に乗り継ぎ、当該列車に戻るという、非常に手の込んだものだった。
2000年代に入ると、十津川警部役が高橋英樹に交代したことで主役も変わり、サポート役にまわった亀井刑事役も高田純次に交代。2020年まで続いた。
また、TBSでも『十津川警部シリーズ』と銘打ち、十津川警部を演じる渡瀬恒彦を主役に据え、亀井刑事を伊東四朗が演じた。原作と異なる点として、十津川警部にとって亀井刑事は部下だが、年上ということもあり、敬語を使っている。ちなみに「消えたタンカー」では、渡瀬恒彦の実兄、渡哲也がゲスト出演した。