ダサい「ママチャリ + ヘルメット」4月努力義務化へ 定着させるには罰則に頼ってはいけない!

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2023年4月からすべての自転車利用者にヘルメット着用の努力義務が課されることになった。定着への課題を考える。

「メットイン・タクト」でスタイル確立

スクーターのイメージ(画像:写真AC)
スクーターのイメージ(画像:写真AC)

 さて、1986年に原付きヘルメット着用が罰則付き義務化となる前年の1985年、ヤマハから「ボクスン」というバイクが発売されたのをご存じだろうか。シートの下に収納スペースを設け、ヘルメットを収納できるようにした最初の原付きである。残念ながらボクスンは爆発的ヒットとはならなかったようだが、義務化翌年の1987年にホンダから発売された4代目のタクト、通称「メットイン・タクト」は爆発的なヒットを記録した。

 年配の読者の中には、乗ったことがある人もいるのではないだろうか。メットイン・タクトの大ヒットによって、シートの下がトランクで、鍵をかけてヘルメットが収納でき、ヘルメットをかぶって走っているときは荷物入れにもなるという、今では当たり前のスクーターのスタイルが確立した。

 では、それ以前の原付きユーザーはどうしていたのだろうか。もちろん罰則がないので、ノーヘルで走るという選択肢もある。しかし、安全のことを考えてヘルメットをかぶろうとすると、なかなか大変である。出先で原付きを止めた場合の選択肢は、ヘルメットを持ち運ぶ、カゴに入れる、鍵付きのヘルメットホルダーがあればそこにかけておく、の3つである。

 しかし、買い物中にヘルメットを持ち歩くのは荷物になるし、駅に止めて電車に乗るようなパターンを考えても、ヘルメットは相当邪魔である。カゴに入れたままにしておくと、盗難やいたずらのリスクがある。鍵付きヘルメットホルダーにつけておけば盗難のリスクは減らせるが、いたずらの可能性はなくせないし、止めている間に雨が降ってしまうと、ビショビショのヘルメットをかぶる羽目になる。つまり、ヘルメットをかぶりやすい環境が全く整っておらず、リスクを下げたいと考えても、そのために支払うコストがとても大きかったのだ。

 ここではメットインのスクーターが登場する前の原付きの話を書いたが、これは現在の自転車と全く同じ状況である。筆者が知る限り、はじめから鍵付きで水にぬれないヘルメットが入る荷物入れを備えた自転車は販売されていないし、ヘルメットホルダーの付いた自転車も見たことがない。

 このような状態で「ヘルメットをかぶりなさい」とだけ言ったとしても、かなりの努力が必要だし、守りたくない人に「守れない言い訳」をたくさん提供してしまうことになるのではないか。

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