ダサい「ママチャリ + ヘルメット」4月努力義務化へ 定着させるには罰則に頼ってはいけない!

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2023年4月からすべての自転車利用者にヘルメット着用の努力義務が課されることになった。定着への課題を考える。

10年後には罰則導入?

シートベルトは罰則導入(画像:写真AC)
シートベルトは罰則導入(画像:写真AC)

 さて、4月からの「罰則なし」の努力義務は、この先どうなっていくのだろうか。過去を振り返ってみると、二輪車のヘルメット着用は高速道路では1965(昭和40)年から、制限速度が時速40km/hを超える一般道路では1972年から義務化されたが、当時は今回の自転車のヘルメット同様に罰則はなく、罰則付きになったのは1975年である。さらに原動機付自転車(以下、原付き)は11年遅れの1986年にヘルメット着用が罰則付きで義務化されている。

 ヘルメットと同様に、事故が起きた時の被害を軽減するシートベルトはどうだろうか。高速道路での運転席のシートベルト着用は1971年に義務化されているが、当時はやはり罰則なはく、罰則付きとなったのは1985年である。一般道路での前席シートベルト着用の罰則は1992(平成4)年に始まっている。2008年には全ての席でのシートベルト着用が義務化されているが、現時点で後部座席は高速道路では罰則があるものの、一般道路では罰則なしにとどまっている。

 過去の経緯を見ると、多くの規制が「罰則なし」の義務から始まり、おおむね10年程度をかけて罰則付きに移行していることが分かる。このため、自転車のヘルメットや、一般道での後席シートベルトも、いずれは罰則付きに移行していく可能性が高そうだ。

 先ほど、筆者は自転車乗車時のヘルメット着用努力義務化に肯定的であると書いたが、ネット上で言われているさまざまな意見にも、もっともなところがあると思っている。規制がなかったところに規制がかかるわけであるから、自転車のユーザーはこれまでよりも不自由を強いられる。これは自分の命を守るためでもあるので、ユーザー自身がある程度の不自由を受け入れるのは仕方ないことだとは思うが、事故による死亡リスクが減ることで、実は社会全体が恩恵を受けている側面もある。

 例えば事故単体を見ても、相手が亡くならずにけがで済めば、加害者が受ける社会的、経済的、精神的ダメージは、はるかに小さくて済む。事故の当事者以外でも、例えば支払われる保険料の軽減や、救急隊、医療機関の負担軽減などのメリットもある。さらに、亡くなった人はその時点から消費も納税もできないが、生き延びて社会復帰をしてくれれば、その後の人生における消費で経済を活性化してくれるかもしれないし、納税者として国や自治体に貢献してくれるかもしれない。つまり、人が死なないということは、本人や家族、当事者だけでなく、社会全体にとっても少なからず良いことなのだ。

 こう考えてみると、自転車乗車中にヘルメットをかぶるという「死なないための努力」を、社会のみんなで可能な限り手伝うべきであろう。

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