課題山積の大田区「蒲蒲線」 4月の区長退任で風向きどうなる? 駅間800mを阻む厚き壁の行方とは
高架化が生んだ弊害
東京都大田区の松原忠義区長が2022年12月22日、今春に実施予定の区長選に出馬しないことを表明した(4月26日任期満了)。これにより、2007(平成19)年から4期にわたって続いてきた松原区政は幕を下ろす。
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大田区には東京国際空港(羽田空港)などが立地。コロナ禍前までは、成田空港とともに中国・韓国を中心に多くの訪日外国人観光の玄関として機能してきた。
羽田空港への鉄道アクセスは
・東京モノレール
・京浜急行電鉄
のふたつがあり、京急線を利用する場合は品川駅から大田区に所在する京急蒲田駅を経由して向かうことになる。
松原区長が激怒したワケ
京急蒲田駅を出た電車は、すぐに国道15号線を横切る。この国道15号線は東京と神奈川県の川崎・横浜を結ぶ交通量の多い道路で、その踏切は事故や渋滞の原因になることから早い時期から立体交差が求められてきた。国道15号線をまたぐ京急空港線は2010年にのぼり線が、2012年にくだり線が高架線へと切り替えられて踏切は消失している。
品川駅から京急蒲田駅を経由して羽田空港へと向かうのぼり線が高架化された2010年、京急は一足早くダイヤ改正を実施した。このダイヤ改正でエアポート快特の停車駅が変更になり、エアポート快特は京急蒲田駅に停車しなくなった。
京急空港線の高架化は総工費が約1650億円とされ、そのうち大田区は約200億円を負担している。また、高架化工事のために周辺住民の立ち退きが発生したが、区は立ち退き交渉をスムーズにするために住民への理解を呼びかけるなどの協力をしている。
大田区の力がなければ高架化はもっと時間を要しただろう。そうした尽力にも関わらず高架化によって大田区民がかえって利用しづらくなる――そんな事態が起き、松原区長は烈火のごとく激怒した。区長という立場を考えれば、この怒りは不自然な話ではないだろう。