「実現させる気はあるのか」 未着工の「蒲蒲線」計画から浮かび上がる、大田区と東急の深い混迷

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蒲田駅と京急蒲田駅を連絡する「蒲蒲線」計画。大田区は2022年2月10日、同線の関連経費約11億9000万円を2022年度予算案に計上した。今後の行く末とは?

約40年前から遅々として進まず

蒲蒲線の構想図(画像:大田区)
蒲蒲線の構想図(画像:大田区)

「動かざること山のごとし」

とやゆされてきた、東京都大田区の新空港線(蒲蒲〈かまかま〉線)の新線計画に一筋の光明が差し込み始めたのか――。

 大田区は2022年2月10日、同線の関連経費約11億9000万円を2022年度予算案に計上した。予算計上そのものは2017年から続けられているが、これまでは1~2億円だっただけに、「初の10億円の大台乗せで計画に弾みがつきそうだ」と期待する向きがある一方、

「そもそも蒲蒲線を実現させる気はあるのか」

と冷めた声もある。

 この計画、同区内のJR蒲田駅を終着点とする東急多摩川線を実質羽田空港まで延伸するものである。途中から分岐して地下にもぐり蒲田駅と同駅の東約800mにある京急蒲田駅とを横串で刺すようにアンダーパスし、両駅直下に地下駅を設け、東急、京急、JR3路線の乗り換えの利便性向上を目指す。ちなみに「蒲蒲線」の珍名はふたつの蒲田駅の頭文字から取ったものだ。

 蒲蒲線はさらに東進して京急空港線と接続し、最終的に羽田空港第1・第2ターミナル駅に東急電車が乗り入れるのが目標。なお総延長は約4km、総事業費は当初1800億円と見積もられた。

 だが「動かざること~」とささやかれているように、同区は2017年から予算計上し始めていながら、計画はほとんど動いていない。さらにさかのぼると1980年代半ばに同区が調査を正式に始めてから実に約40年も経過しながら、まだレール1本も引かれていないという、実に残念な新線計画でもある。

 ただし国は大いに期待しているようで、2000年代初頭には運輸政策審議会(現在の交通政策審議会)が「2015年までに整備を着手することが適当」と答申するが、関係各位の思惑は一致せず、2015年着工は幻に。

 それでも翌2016年に交通政策審議会が「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申に、蒲蒲線の有効性を盛り込み早期実現を要請。そしてこれを受けて、前述のように区が予算計上――というのがこれまでの経緯なのだが、依然として五里霧中の状況が続いているのが実情だ。

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