広島市の借金は1兆円以上! 路線バス「上下分離」で大注目も 財政は指定都市最低レベル、乗ったのはバスか、それとも“火の車”か
コロナ禍でバス事業の赤字深刻
広島市が市内を走る路線バス維持に向け、上下分離方式を導入する方針を固めた。路線バスを社会インフラととらえた全国初の取り組みで、近く国に新たな財政支援を求める方針だ。
2025年春完成予定の駅ビル建て替えであちこちから工事のつち音が聞こえるなか、次々に路線バスが乗り入れてくる。土曜日とはいえ、師走の肌寒い朝とあって、乗り込む人はそれほど多くない。広島市南区松原町のJR広島駅南口バス乗り場。1日3000便以上のバスが繁華街の八丁堀や観光地の原爆ドームなどがある市中心部の中区へ向かう。
広島市は人口約120万人の政令指定都市だが、地下鉄がない。市内の交通を支えているのは、路面電車と路線バスだ。「たまの買い物は八丁堀か基(もと)町のデパート。便数が多いから、バスで行くことが多いわ」。バスに乗り合わせた年金生活の女性(70歳)は笑顔を見せた。
広島市によると、路面電車、路線バス、JR、新交通のアストラムラインの市内公共交通機関利用者はコロナ禍まで、ピーク時の1994(平成6)年度より10万人ほど少ない年間60万人近くを維持していた。しかし、この減少分のほとんどが路線バスで、1990年代前半に約30万人いた利用者が17万人前後に落ち込み、バス事業者の経営を圧迫している。
そこへコロナ禍が直撃した。広島市内にバス路線を持つ広島電鉄、広島バス、広島交通、芸陽バス、中国JRバスの主要5社の2020年度利用者は29%、売り上げは35%減少した。2021年度も売り上げは回復せず、ほぼ横ばいで推移している。
広島市内に路線を持つ8社のバス事業は2020、2021の両年度ともすべて赤字。2021年度の赤字額は計60億円に膨らんでいる。広島県バス協会の赤木康秀専務理事は
「事業者の経営は非常に厳しい。事業者支援と利用者の利便性向上のためにできることから始める必要がある」
と指摘する。