航空業界を悩ます「パイロット不足」 需要急回復で問題再燃、かつては中国による引き抜きも

キーワード :
,
コロナ禍が落ち着き、航空業界で再び懸念されているのが「パイロット不足」の問題だ。その処方箋はあるのか。

航空需要の急回復で問題再燃

飛行機(画像:写真AC)
飛行機(画像:写真AC)

 航空業界に明るい兆しが見えてきた。本年度、日本航空(JAL)は通期で純利益450億円、全日本空輸(ANA)も400億円と、いずれも3年ぶりの黒字を見込んでいる。

 格安航空会社(LCC)はまだ厳しいようだが、10月から始まった全国旅行支援や水際対策の緩和が追い風になるだろう。コロナの第8波の到来が懸念材料ではあるが、もはや「コロナ慣れ」から、以前ほど移動需要が落ち込むとは考えにくい。コロナ禍という外的脅威に対して、何とか踏みとどまったといえるだろう。

 ただ、航空業界がコロナ禍以前に抱えていた構造的問題は再発しないのか。コロナ禍以前、観光面においてオーバーツーリズム(観光公害)の問題があり、再発しようとしている。同様に、航空需要が今後急回復すれば、パイロット不足の問題も再燃するのではないか。

 2019年、日本ではこの問題が顕在化し始めていた。LCCではパイロット不足により欠航が生じており、JAL、ANAもその確保に不安を感じていた。それ以前にも「2030年問題」が叫ばれていた。2030年問題とは、バブル期に大量採用・育成されたパイロットが引退の時期を迎えることから、2030年前後にパイロット不足の問題が深刻になるというものだ。

 そのタイミングを見越して、パイロットを計画的に育成していけばいいように思われるが、実際はなかなかうまくいかない。パイロットを養成するには数億円のコストと時間がかかる。機長になるためには、副操縦士から少なくとも10年の乗務経験が必要だ。

 しかも、パイロットになるためには厳しい身体検査をパスしなければならない。優れた平衡感覚が求められ、また長時間座っていなければならないため、腰に支障を抱えていると問題がある。その上で厳しい訓練・試験をパスしていかなければならないのだ。

 バブル崩壊後、日本は長期にわたる不況にさいなまれることになった。いつ需要が盛り上がるかわからなかったため、航空会社は多額の投資をして自社でパイロットを養成することはリスクでしかなかった。そこで他の選択肢を模索したのだった。

全てのコメントを見る