航空業界を悩ます「パイロット不足」 需要急回復で問題再燃、かつては中国による引き抜きも

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コロナ禍が落ち着き、航空業界で再び懸念されているのが「パイロット不足」の問題だ。その処方箋はあるのか。

中国によるパイロット引き抜きも

航空大学校(画像:写真AC)
航空大学校(画像:写真AC)

 パイロットの養成を担う国家機関に、航空大学校(宮崎県宮崎市)がある。かつて、この定員を増やせばどうかという話が出た。これについては、国会で

「民間企業の人材をなぜ国の負担で要請しなければならないのか」

という声が上がり、航空大学校自体の存在を否定しようとする動きもあった。

 たとえ民間企業の人材でも、結果として国の経済活動を支える航空輸送の人材を育成することになるので、こうした批判は的外れだが、いずれにせよ、国の財政がひっ迫するなか、航空大学校の定員を増やすことは難しいのだ。

 では、海外からパイロットを招けばいいのか。国際的なパイロットの派遣会社もある。しかし、コロナ禍以前は中国などの経済発展が著しかったため、それにともない航空需要が急増。さまざまな国との奪い合いになっていた。

 中国の航空会社のなかには

「年収4000万円」

を提示し、日本の航空会社からパイロットを引き抜いた事例も出た。日本では2010(平成22)年のJAL経営破綻以降、パイロットの年収は抑制されて平均で2000万円を下回るまでになっていた(最盛期は3000万円を軽く超えるパイロットも多かった)。以前なら、JALやANAから中国の航空会社のパイロットに転身するなど考えられなかったが、現実のものとなったのだ。このことはJALやANAにとって大きな脅威となった。

 自衛隊のパイロットを民間航空会社に転籍させることも検討された。しかし、民主党政権下では自衛隊から民間のパイロットへの転身も天下りとみなされ禁止されていたが、政権が変わり、パイロット不足への対処のひとつとして検討されるようになった。

 しかし、自衛隊の機長として求められる要件と、民間航空機のパイロットに求められる要件には差がある。自衛隊から民間のパイロットになるためには、改めて訓練を受けなおさなければならないという壁があるのだ。自衛隊で機長として活躍した人間が民間に移り、副操縦士として改めて訓練を受けなければならないことは心理的抵抗も大きいだろう。
 そこで模索されたのが、大学でのパイロット養成である。筆者(戸崎肇、経済学者)が所属する桜美林大学の航空マネジメント学群でも、パイロット養成のための教育が実施されている。ほかには

・東海大学(工学部 航空宇宙学科 航空操縦学専攻)
・法政大学(理工学部 機械工学科 航空操縦学専修)
・崇城(そうじょう)大学(工学部 宇宙航空システム工学科 航空操縦学専攻)

が養成のための学部を設置し、同様の教育を行っている。しかし民間であるがゆえ、

・育成のためのコスト負担が大きい
・航空大学校に比べて採用実績が低い

という問題がある。

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