村田兆治の羽田逮捕で浮かび上がった「保安検査の闇」 職員の劣悪待遇と国防観点から、今すぐ在り方を見直せ
ロッテオリオンズで活躍した元プロ野球選手の村田兆治が、羽田空港の保安検査場で女性保安検査員に暴行を加えたとして、現行犯逮捕された。しかし村田を責めるだけでは物事は何も解決しない。
日本の保安検査開始は約50年前
「マサカリ兆治が捕まったって本当?」
速球にこだわり、球界を引退してからもトレーニングを続けている「求道者」、元ロッテオリオンズの村田兆治(72歳)がいったい何をしたのか――。中年以上の野球ファンなら、誰もが首をかしげたことだろう。
場所は羽田空港の保安検査場。何度も金属探知機にひっかかり、いらだった村田氏が立ちはだかる女性保安検査員を押しのけたことが、暴力を振るったとされた。しかも、その場での注意や罰金ではなく、逮捕拘留されたのだ。
これは有名人による特別なケースではない。保安検査は2022年3月の法改正によって義務化され、検査を拒むような行為に対しては厳しい罰則が科されるようになった。東京オリンピックのための検査態勢強化が目的だったとされているが、実際には、2019年末日に発生したカルロス・ゴーン(元日産自動車会長)の海外脱出によるところが大きい。当時、この失態が問題視され、保安検査の強化が図られた。
従来、保安検査は
「位置付けがあいまい」
だった。なぜなら、その重要性にもかかわらず強制力がなかったためだ。仮に乗客が保安検査を拒んでも、法的に強制できなかったのだ。
そもそも、ひと昔前まで保安検査は行われてすらいなかった。ハイジャック事件が多発するなか、まずアメリカで導入され、1973(昭和48)年から日本でも行われるようになった。
しかし、あくまでも検査に対して乗客が
「自主的に応じてくれる」
ことが前提だった。どうしても検査を拒むなら、検査側はそれを押し切れなかった。