子どもの「キックボード」は遊具で、車両にあらず? 広島市7歳児死亡事故で考える 法と一般認識の乖離とは
道路利用に関する誤解

しかし、警察側にもこうした誤解を招く問題がある。例えば2020年8月の警視庁交通部の「子供交通安全情報」なるリーフレットである。
「道路でやってはいけません! ローラースケート、スケートボード、キックスケーターなど 乗り物ではなく、遊ぶ道具です 道路で乗ってはいけません! 道路は車や自転車、歩く人が通るところです。使ってもよい場所で、安全に乗りましょう。道路で遊んではいけません! 道路ではボール遊びや落書きなどもしてはいけません」
児童の安全第一を考えてのリーフレットであり、児童に向けたがために単純化したのはわかるが、今回の事件や先の判例、道交法の条文を照らし合わせても
「少々乱暴な書き方」
のように思う。「ローラースケート、スケートボード、キックスケーターなど」は道路でやっていけないことではない、ただ「交通のひんぱんな道路」で禁止なのだ。
今回の事件では、児童側の非として「公道でキックボードは違法」と語る向きもあるが「交通のひんぱんな道路」とある限り、あくまで司法判断によるものでなければならない。「交通のひんぱんな道路」でない限り、道交法上は即違反とならない。また先の判例でも児童の遊具は「車両」ではなく「歩行者」に近いとされている。
公正世界仮説(正しいものが正しい結果を得る、という誤った思い込み、認知バイアス)ではないが、ごく一部とはいえ、勝手な決めつけや被害者の非を邪推するような行為は慎むべきだ。法の未整備はまた別の問題である。
男児は青信号を渡っていただけである。キックボードもまた悪くない。
・キックボードを使っていたこと
・青信号を渡って赤信号を無視した車にひかれたこと
は別問題である。そもそも赤信号は止まらなければいけない(緊急車両や災害等の緊急避難は除く)。
最後に重ねて、男児に対して心からお悔やみを申し上げる。