群馬の名湯「草津温泉」 いまや車でアクセスも、昭和中期までは直通列車が走っていた!
草津温泉への公共交通機関を使ったアクセスは現在、三つに限定されるが、かつては鉄道で直接行くことができたのをご存じか。
もし今、草軽電気鉄道があったら?

さて、ここで考えてみたいのは、
「もし、『草軽電気鉄道』が今も存在したら」
という「if」だ。
確かに、利便性、スピード感が重視される高度成長期以降のニーズにはマッチしなかったかもしれない。しかし、スローライフといった言葉が一般化し、あえてアナログなもの、ゆったりとした時間が歓迎される今の時代ならどうだろうか。
軽井沢から草津温泉まで、数時間をかけて車窓の風景を楽しみながら浅間山麓の観光スポットをのんびりめぐる高原列車は、2020年代の感覚ではとても魅力的だ。線路や橋梁の脆弱(ぜいじゃく)性が改善されていることが前提だが、草軽電気鉄道に乗車すること自体が観光コンテンツ化し、大変な人気になっているのではないだろうか。箱根登山鉄道のように、スイッチバックもひとつの名物になっただろう。インバウンドにも受けがよさそうではないか。
おそらく今なら、線路沿いに季節の花が植えるなど“映える”ポイントが設定され、拠点となる駅では、地元産の素材で作った駅弁やサンドイッチなどの特製フードも販売されるに違いない。各駅には特産物を販売する道の駅や足湯施設が隣接されるだろうか。
と、そんな妄想はさておき、最後に大正から昭和の一時期まで、観光の促進や物流の面で沿線地区に活気をもたらした草軽電気鉄道のその後について確認しておきたい。
運営会社の草軽電気鉄道は、鉄道路線の全廃後に草軽交通と社名を変更して、バス事業に転換。軽井沢と草津温泉とを結ぶバスの運行を始めた。現在は東急グループ傘下を離れたが、急行草軽線と呼ばれる同路線に限らず、周辺にいくつもの路線を展開させ、多くの住民や観光客を運んでいる。