つくばエクスプレス「延伸構想」は本当に実現するのか? 具体案は四つも、うごめく政治的思惑 JRとの戦いになる恐れも
2005年開業、数年で黒字化に

長年「夢物語」の状態だった、つくばエクスプレス(TX)の茨城県北部への延伸構想(北進)が、ようやく前進し始める。茨城県は2022年度の当初予算にTXの県内延伸調査検討事業予算として1800万円を計上したが、これは県がTXがらみで事業費を計上した初のケースであるため、快挙として欣喜雀躍(きんきじゃくやく。大喜び)する県民も少なくないようだ。
TXは東京都千代田区のJR秋葉原駅と茨城県つくば市のつくば駅とを結ぶ通勤・通学用の鉄道だ。全長は約58kmで2005(平成17)年8月に開業した。三郷市(埼玉県)や流山市、柏市(以上、千葉県)、守谷市(茨城県)といった都市を通過し、なるべく直線を保って急カーブを少なくするなど高速化に努め、国内の在来線としてはトップクラスの最高時速130kmを達成。秋葉原~つくば間を45分程度で結ぶ快速さが売りだ。
筑波学園都市に乗り入れる路線だけにブランド力も高く、千葉県の流山おおたかの森駅(流山市)や柏の葉キャンパス駅(柏市)などは、大手不動産会社などによる「住みたい駅ランキング」で上位に食い込むなど、沿線は首都圏でも比較的人気が高い。
運営母体は第三セクターの「首都圏新都市鉄道」(MIR)で、茨城県が筆頭株主を務め全株式の18.05%を保有、以下、東京都(17.65%)、千葉県(7.06%)、足立区(7.06%)、つくば市(6.67%)と沿線自治体が満遍なく株主として名を連ねる。
TXはもともと、JR常磐線のラッシュ時の殺人的な混雑率を緩和するためのバイパス線・常磐新線として計画されたものがルーツだ。1985(昭和60)年にまとめられた「運輸政策審議会第7号答申」で早期整備がうたわれ、やがて結実した。
ただしこのときはあくまでも東京都心~筑波学園都市で、県北部へのさらなる延伸はあまり話題になっていなかった。
だが開業後、TXは順調に利用客を伸ばし、開業3年目の2008年度には早くも単年度で営業黒字をはじき出し、加えて翌2009年には1日平均乗降客数
「27万人」
を達成するなど、幸先のよい滑り出しを見せた。そしてこれを追い風にと考えたのか、「おらが町にもTXを」という発想の我田引水ならぬ“我田引鉄”の延伸運動があちらこちらで誕生した。