EV輸出に血走る中国 急成長市場を支える「表と裏」の顏とは
PHEVの販売・輸出が急増する中国
日本貿易振興機構(JETRO)によると、2021年の中国の自動車販売台数は、2531万台(2020年比1.9%減)で、2位の米国の1445万台(15.2%減)を大きく引き離した。中国は2009年以来、世界一の市場を堅持しているが、2022年1~6月の販売台数1205万台から、市場全体の成長は鈍化しつつあるように見え、売れ方も大きく変化し始めている。
まず、新エネルギー車(NEV)の2021年販売台数は、補助金等を追い風に704万台(2020年比2.58倍)に激増した。なお、NEVとは
・バッテリー電気自動車(BEV)
・プラグインハイブリッド車(PHEV)
・燃料電池自動車(FCEV)
を指す。
中国メディアの中国能源報は「自動車の究極の形はPHEVなのか」と題し、中国ではBEVよりPHEVの販売が伸びていることを報じた。中国自動車流通協会は
「エンジン車やハイブリッド自動車(HEV)に比べて、PHEVはNEVの優遇政策を受けることができ、コストパフォーマンスでは同クラスのエンジン車をしのぎ、EVほど利用時の制約がない」
と解説、中国自動車工業会は
「比亜迪(BYD)や理想汽車などの中国企業がPHEV市場を切り開いた。今後、大きく成長するだろう」
と語る。
BEVのモデル数を増やす中国
次に、中国対外経済貿易合作部によると、中国の自動車輸出は100万台以下で長年推移してきたが、2021年には213万台に倍増し、日本の382万台、ドイツの230万台に次ぐ世界第3位となった。
2022年1~6月の輸出台数は47.1%増の121万台で、通年ではドイツを上回り2位となる可能性もある。これは、欧州の脱炭素政策を受け、手ごろな価格の中国製BEVの需要が高まっている一方で、内需の頭打ちにより、国内生産工場の稼働率は低下しているためだ。
このような状況を背景に、中国企業もBEVのモデル数を増やし、完成車とバッテリーの組み付け工場や研究開発拠点を欧州に建設し、さらなる輸出の拡大を図っている。
本稿では、このような新たな変化も踏まえて、中国自動車産業急成長の「表と裏」と阻む「壁」を解き明かす。