EV輸出に血走る中国 急成長市場を支える「表と裏」の顏とは
BEVのモデル数を増やし、さらなる輸出の拡大を図る中国。本稿では中国自動車産業急成長の「表と裏」を解き明かす。
中国市場が成長したワケ
筆者(北河定保、自動車ジャーナリスト)が2016年に北京郊外で撮影した写真には、三輪車の低速BEVが映っている。繊維強化プラスチック(FRP)ボディーの最新三輪車は1万元(17万円)程度で、今でも、都市の宅配車や農村部の日常の足として使われている。しかし、話題となっている最新BEVは全く別物だ。このギャップをどのようにして埋めたのか。
その要因は、外資の導入だ。1980年代の改革開放政策により、「市場と技術の交換」を戦略に、外資企業の誘致を開始し、フォルクスワーゲン(VW)が上海汽車と合弁企業を設立した。その後も参入が続いた結果、中国自動車メーカーの技術や品質レベルは飛躍的に向上し、1992年には生産台数が100万台を越えた。
次の要因は、2015年の国策「中国製造2025」だ。重点分野のひとつにNEVが選定されたため、中央政府と地方政府は
・電動走行距離に応じた補助金を支給
・北京等6都市では、ナンバープレート発給枚数の制限対象からNEVを除外
・北京市等では、大気汚染がひどい日の通行制限対象からNEVを除外
といった優遇策を実施し、販売を促進している。
さらに規制緩和として、2018年には、EV関連合弁企業への外資の出資比率50%規制が撤廃され、テスラは全額出資子会社を上海に設立し、2019年に生産を開始。VWやBMWも出資比率を引き上げた。