EV輸出に血走る中国 急成長市場を支える「表と裏」の顏とは
BEVのモデル数を増やし、さらなる輸出の拡大を図る中国。本稿では中国自動車産業急成長の「表と裏」を解き明かす。
中国の今後の成長を阻む「壁」
中国自動車産業の急成長により、海外企業は警戒感を強めている。BEVを増やすなら、充電インフラも増やし、電力も脱炭素化しなければならない。
次のような、さまざまな壁が中国自動車産業の前に立ちはだかっている。
●優遇策の削減~廃止
中国は2022年末で廃止予定の免税措置を、国内販売喚起のため1年延長する。英国は2022年6月に廃止済みで、ドイツはPHEVの補助金を2022年末で廃止、BEVとFCEVの補助金は段階的に削減する予定だ。米国はインフレ抑制法により、中国など、海外製のEVとバッテリーは補助金対象外とした。
●国境炭素税
二酸化炭素排出量が多い製品に対し制裁的関税を課すもので、欧州連合(EU)は2027年に全面的な導入を予定する。中国公衆環境研究センターは「中国の輸出企業は真剣に対処しなければならない」と語る。
●品質問題(バッテリー発火)
新興メーカーだけではなく、威馬汽車(WM Motor)、BYD、NIO、テスラでも発火事故が発生し、リコールが行われている。欧米日の顧客の品質(特に劣化品質)要求は、中国の顧客よりもはるかに厳しい。
●顧客の選択基準
今、中国顧客の車種選択基準は、動力性や操縦性などの機能から、インターネット接続や自動運転などの先端技術の有無に移行しており、所有から共有への移行傾向も強まる。「中國製造2025」は中国の自動車産業の自立と規模の拡大を目指している。一方、合弁会社での外資出資比率規制撤廃により経営主導権権を握った外国企業は、中国企業への技術移転を抑制し、販売増加からより多くの利益を得ることが可能になる。
以上から、中国の自動車企業の自主開発が実現するのはずっと先のことだろう。