米国、「EV保護主義」鮮明に 巨大市場すら持たない日本はこれからどう戦うべきなのか?
米国の新EV販売支援策が成立
8月16日、米国のバイデン大統領はインフレ抑制法案に署名し、電気自動車(EV)/PHEV(プラグインハイブリッド車)の税額控除に関する追加条項を2023年1月1日に発効することを決めた。
ポイントを簡単にいうと、EV/PHEVの新車に対して7500ドル(約108万円)、中古のEV/PHEVには4000ドル(約58万円)の税額控除を付与するというものだ。
税額控除は、実質的には補助金に近い。最終的に納めるべき税額からその分が免除されるというもので、例えばその年の納税額が200万円だとすると、そのうち102万円分が免除され、納税額は98万円になる。日本人には親しみのある保険料控除や医療費控除といった所得控除とはまったく意味が違うことに留意したい。
新法案の成立を受けテスラの株価が上昇
これまでも同様の税額控除はあったのだが、この新法案の成立を受けて、同日のテスラ株は上昇し、株式アナリストらはテスラの目標株価を引き上げた。それはなぜなのか。理由はふたつある。
ひとつ目は、旧法案にあったメーカーごとに20万台までというキャップが無くなったことだ。テスラやGM、トヨタは、すでにこの20万台分の枠を使い切っており、現時点では税額控除なしで販売されている。しかし新法案が発行する2023年1月1日以降は、再び税額控除が付与されることになるため、テスラの販売を大いに後押しするだろう。
ふたつ目は「北米で最終組み立てを行った車両」というルールが追加されたことだ。このため、輸入車のEV/PHEVは控除の対象外となる。これはかなり保護主義的な色合いが強い法案だ。メーカーの国籍を縛ってしまうほど下衆なものではないが、北米にEVの生産能力を持つ他国のメーカーは少なく、あっても生産台数は限られている。
これによって、米国のメーカーであるテスラやGM、フォードは優遇され、いっぽうで他国のメーカーは大きなハンディを負うことになる。