EV輸出に血走る中国 急成長市場を支える「表と裏」の顏とは
成長「裏」の秘密
次に、開発時の「裏」の秘密とその限界について、実例を六つ交えて説明する。
●コピーではオリジナルを越えられない
自社A車と日本B車の耐久限界を比較するために試験を実施し、B車のボディー亀裂が先に発生した。B車は薄い日本製の高張力鋼板を使った適性品質で、A車は厚い中国製の鋼板を使った過剰品質だった。A車は安いが重く、燃費や加速性能が劣る。
●結果重視とプロセス軽視
日本C社の最新の開発大日程表を数千万円で入手したものの、「どう使うのか」がわからなかった。大日程表は単なる結果であって、その裏側には細かいプロセスが隠れている。それを知らないと使えない。他社の耐久試験条件と判定基準も入手しているが、なぜそう決まったのかを知らずに自社開発に適用すると判断を誤る。
●設備は一流、技術は三流
実車風洞を買った。空力特性の測定も難しいが、測定結果を設計に反映することはもっと難しい。知見がないので活用されずにほこりをかぶっている。
●開発は社外、製造は社内
素晴らしい内外装意匠は、ほぼ外国人の作品だ。計器盤、シートや冷暖房機器などのシステム部品はサプライヤーからアッセンブリーで購入する。エンジンのような複雑システムは、外国人エンジニア、海外の開発企業とサプライヤーの力を結集して開発する。あらゆる部署で、欧州、日本、韓国、インド等のエンジニアが勤務するが、能力は玉石混交だ。大量に雇用し、評価結果が悪いと解雇だ。開発は社外戦力に安価で任せ、製造は社内で行い、雇用と利益を確保する。
●高品質だが高い日本製品が「敵に塩」を送る
日本のサプライヤーも盛んに売り込みに来る。中国人エンジニアは日本の高性能に興味津々で、さまざまな情報をタダで入手しようとするが、発注には至らない。日本製品は高性能・高品質だが高いため、品質と性能はそれなりだが安い中国製品を選ぶ。それでも日本のサプライヤーは品質を適正化することはしない。
●コンプライアンス軽視
不具合は「顧客の使い方」が悪い、と考える。自己認証(自動車会社が自社の設備で測定したデータを当局が承認する方式)だから燃費は何とかなると考える。近年、中国の自動車会社は、表面的には「見栄え、カタログ性能と初期品質が素晴らしい車を短期間で開発し、利益を高めている」と賛美されているが、実は他人任せだ。