最強企業「GE」はなぜ崩壊したのか? 「選択と集中」が生んだ誤算、その盛衰史をたどる

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航空機エンジン、鉄道事業の分野で大きな存在感を持つゼネラル・エレクトリック。その盛衰をたどる。

補えなかったキャッシュ不足

トーマス・グリタ+テッド・マン『GE帝国盛衰史』(画像:ダイヤモンド社)
トーマス・グリタ+テッド・マン『GE帝国盛衰史』(画像:ダイヤモンド社)

 2017年、ついにイメルトは退陣し、GE再生はGEヘルスケアのCEOだったジョン・フラナリーに託されたが、フラナリーが直面したのは絶望的なキャッシュ不足だった。

 アルストムを吸収し、GEを引っ張っていく存在となるはずのGEパワーだったが、GEパワーの利益は将来のメンテナンス収入などによってかさ上げされており、肝心の現金が入ってくるめどが立っていなかったのだ。

 GEではウェルチの時代以来、トップが示した目標を達成するために会計テクニックを使って利益を計上するやり方がまん延しており、また、長期のメンテナンスなどが必要な機械を売る場合には、このメンテナンス収入の見込みを上方修正することによって数字をいじることができた。こうして、複雑化した組織の中でトップにもその数字の実態がわからなくなっていたのだ。

 フラナリーはキャッシュ不足を解消するために、事業の売却を進め、自社株買いをやめ、取締役会を縮小した。これらのやり方は間違っているものではなかったが、投資家からの信頼を失ったGEの株価は、フラナリーが口を開けば下落するような状態になってしまった。

 フラナリーは14か月でCEOを解任され、医療機器などのコングロマリット・ダナハーのCEOを務めていたことのあるラリー・カルプが、新たにGEのCEOとなり再建を担うことになった。しかし、GEアビエーションがエンジンを供給しているボーイング737MAXが2機も墜落し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって航空機事業が大打撃を受けるなど、その前途は多難である。

 東芝のように、ウェルチの経営スタイルをまねしようとした日本企業も多い。GEという「帝国」の崩壊を活写した本書は、間違いなく読ませる本であり、日本企業の今後を考える上でも非常に有益と言えるだろう。

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