最強企業「GE」はなぜ崩壊したのか? 「選択と集中」が生んだ誤算、その盛衰史をたどる

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航空機エンジン、鉄道事業の分野で大きな存在感を持つゼネラル・エレクトリック。その盛衰をたどる。

リーマン・ショックでトリプルA消失

GEのウェブサイト(画像:GE)
GEのウェブサイト(画像:GE)

 イメルトはウェルチと同じく、部下には数字を達成するように厳しく接した。そのために部下たちはなんとかして数字のつじつまを合わせようとした。

 例えば、GEの傘下にあったユニバーサル・スタジオが制作したピーター・ジャクソン監督の『キングコング』は、2億ドル超の予算をかけてつくられたが、残念なことに当初予想していたような観客を動員することはできなかった。そこで急きょ、映画の拡大版のDVDが発売されることになった。このDVDの販売を織り込んで予測をやり直せば、現時点での作品の資産価値を下げなくてもすむのだ。

 また、GEキャピタル依存の経営を改めたかったイメルトだが、結局は利益を確保するために、GEキャピタルへの依存はウェルチ時代よりも強まっていった。

 そんななかで、GEはリーマン・ショックに襲われる。サブプライムローンの取引にも関わっていたGEキャピタルは大きな打撃を受け、さらにCP(コマーシャル・ペーパー)の市場が急速に冷え込んだことによって、資金調達をCPに頼っていたGEはキャッシュ不足に陥った。この危機はアメリカ政府の救済策によってなんとか乗り切ったものの、2009年にはGEは減配に追い込まれ、トリプルAの格付けも失った。

 イメルトはGEキャピタルの大部分を手放すとともに、新たな収益源を見つけるという行動に出ることになる。2015年、イメルトはGEキャピタルの売却(ただし、航空機のリース部門などは残った)を発表したが、同時期に水面下でフランスのコングロマリット・アルストムの買収を狙っていた。

 アルストムはタービン事業や旅客列車でGEと競合する存在だったが、もし買収に成功すれば、タービン事業でシーメンスや三菱重工に対して圧倒的な優位を獲得できる。イメルトは社運を賭けてこの買収に取り組んだ。ところが、この買収はフランス政府の横やりや欧州委員会による審査などで停滞する。

 さらに、イメルトが収益の柱にしようとした石油事業が失敗し、GE全体のデジタル化を推進するためのソフト「プレディクス」も、GEが扱う事業があまりにも巨大なために、どんな機能を持たせればいいのかわからない状態になってしまい完成しなかった。

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