最強企業「GE」はなぜ崩壊したのか? 「選択と集中」が生んだ誤算、その盛衰史をたどる

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航空機エンジン、鉄道事業の分野で大きな存在感を持つゼネラル・エレクトリック。その盛衰をたどる。

官僚主義を排した経営者ウェルチ

2000年11月27日、ニューヨークで開かれたイメルト氏の就任発表記者会見で質問に答えるゼネラル・エレクトリック前会長兼CEO(当時)のジャック・ウェルチ氏(左)(画像:AFP=時事)
2000年11月27日、ニューヨークで開かれたイメルト氏の就任発表記者会見で質問に答えるゼネラル・エレクトリック前会長兼CEO(当時)のジャック・ウェルチ氏(左)(画像:AFP=時事)

 GE(ゼネラル・エレクトリック)は、発明王トーマス・エジソンが取締役を務め、ハリウッド俳優時代のロナルド・レーガンがテレビコマーシャルに出演したというアメリカを代表する企業だ(もっとも、GE設立の立役者は金融界のジョン・ピアンド・モルガンであり、エジソンはお飾りだった)。モビリティ産業においても、航空機エンジン、鉄道事業の分野で大きな存在感を持っている。

 また、「20世紀最高の経営者」とも言われた、1981~2001年にかけてGEの最高経営責任者(CEO)を務めたジャック・ウェルチの名前を知っている人も多いだろう。

 ところが、このGEの業績は低迷している。ウェルチの時代に5000億ドルを超えていた株式の時価総額は、現在1000億ドルを割り込んでおり、2018年6月には、ダウ工業株平均を構成する30銘柄からも外れてしまっている。

 なぜGEは衰退してしまったのか? 今回紹介するトーマス・グリタ+テッド・マン『GE帝国盛衰史』(ダイヤモンド社)は、この謎にウォール・ストリート・ジャーナルのふたりの記者が挑んだものだ。本書では、ウェルチの跡をついでCEOになったジェフ・イメルトを中心に、さまざまな人物に光を当てながら「GE帝国」の崩壊の過程を追っている。

 ウェルチは、官僚主義を排除して事業の再編を大胆に進め、核兵器になぞらえて「ニュートロン・ジャック」とも呼ばれた。ウェルチは大胆な事業の売却や人員削減を進めるとともに、「ランク・アンド・ヤンク」と呼ばれる人事を行った。これは管理職に部下のパフォーマンスの年間ランキングを作成させ、下位10%に入った社員は改善がなければ解雇するというもので、部下を激しい競争に駆り立てた。

 事業再編のキーとなった考えが、有名な

「市場で1位か2位になれる事業だけに集中すべき」(選択と集中)

というものだ。

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